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生まれ変わるGE、成果を売る企業へ

「FastWorks」という新しい働き方と本気の変革

企業文化こそ経営戦略を動かすエンジン


 「モノを売る」企業から「成果(=顧客企業にとってのアウトカム)を売る」企業へ、変貌を遂げるためには、思想だけでなく“行動をもって”変わる必要がある。

 顧客起点で最大のアウトカム(成果)をスピーディーに導く働き方、FastWorksを、経理部門や法務部門などバックオフィスを含む全社で実践できるようにしたフレームワークが「FastWorks Everyday」だ。これを感覚として体得できるよう、全GE社員を対象にした、アクションラーニング形式の研修を展開している。

 この研修で、最初にフレームワークは提示されない。言葉で示せば当たり前すぎる。行われるのは、参加者それぞれが実際の課題を持ち寄り、それを解決するための演習である。

 演習を通じて大半の社員は、自分がいかに“アタマだけで”考える習慣がついていたかを思い知らされる。さらに、各自の専門性は時として仇(あだ)にさえなるということにも気付く。

 これまで成果を挙げた方法の延長線上で「これが正しい」と考えても、昨日の正解は今日の正解ではない時代。不確実性が高まり、顧客自身も進むべき方向性が分からないなかでは、とにかく他者との対話を繰り返し、多様な考え方から学び、失敗を容認し、柔軟に方向転換=ピボットすることが必要だと気づく。

 ここで得た“気づき”を日々の職場に持ち帰ることで、さらに深められる。そんな仕組みのFastWorksの研修は、日本でもすでに1,300名以上が履修(2017年1月時点)している。

 日本で講師を務めるのは、普段は営業、財務、製造などの業務にあたっている21名の社員。日々の業務に加えて、喜んで普及に取り組み、そうすることが評価される土壌があるからこそ、FastWorksは急速に太い根を広げることができている。
                  

新しい時代における日本人の強みと弱点


 顧客起点の働き方は日本人にとっては当たり前の精神。顧客の声に耳を傾ける、これは日本の得意領域である。しかし、踏み込んだ議論も繰り返し、本当に必要なことは何かを把握して、時には大方針さえ変更する必要性を認めること、これは日本人が苦手な部分かもしれない。

 一度決めた内容を後になって変えるのは熟慮が足りなかったのではないか、上司に悪い印象をもたれてしまう、関係者をお騒がせしてしまう・・。こんな不安から方向転換を躊躇し、ベストではないことに気付いてからも敷いたレールの上を走り続けてしまう。

 企業単位なら、撤退や戦略変更の意思決定が下せない、という事態に及ぶ。完璧を目指すのではなく、走りながらチューンアップすること。恐れずピボット(方針転換)すること。失敗が許されない環境ではなく、早期の失敗を容認し、そこからの学びを活かすことを評価できる環境を築くこと。この感覚がなければ、今後の競争を勝ち抜くのはより厳しいものになってしまう。

 FastWorksのロールアウトと同時期、GEは社員の人事評価の基準にもなる行動規範も、これからの時代に合ったものへと改めた。また、FastWorksの研修は、まずリーダー層を対象に実施した。

 各組織のリーダー層がまず変革の意図を理解し、自らが体現しながら部下の変化をサポートできるようにするためだ。日本での研修では、様々な事業部門からの参加者が一緒に演習を行う。

 個々のリアルな業務課題を持ち込んだ演習からは、仕事の種別を問わず新しい働き方で成果を最大化できることに、思わず納得させられる。

 競争が激化し、不確実性が増す時代だからといって恐れる必要はない。時代の転換期はチャンスである。変革を、戦略・競争上の優位性にすること。

 FastWorksは単に新しい働き方という手法であって、その目的は、顧客企業の成果を最大化することにある。なぜなら、私たちの行動規範「GE Beliefs」の1つ目にも記されていること、“Customers Determine our Success(GEが成功できるかどうかを決めるのはお客様である)”、これが競争市場における原理だからである。
GEが活用する経営上の主な戦略的手法         
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
経営トップの時代認識がいかに大事かが分かります。それを体系化していくのがGEの強み。

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