専門医が「糖尿病」治療で伝えたいこと
まずは早期発見・早期治療を
コントロール可能な病気
糖尿病には2型と1型があります。2型は複数の遺伝因子はあるものの、生活習慣である運動不足や食べ過ぎと肥満などの環境因子が関与して発症する病気です。日本人の95%以上はこのタイプです。1型は自己免疫疾患やウイルス感染などで突発的に発症することが多く、小児や若年層に多い型です。
糖尿病の治療目標は、糖尿病であっても健康な人と変わらない日常生活維持と健康な人と同じ寿命を全うすることです。そのためには血糖をうまくコントロールし、合併症を予防することが重要です。また年齢や合併症の有無等により、治療目標を柔軟に設定することも大切です。血糖コントロールは食事療法、運動療法、薬物療法の三つが柱となります。
このうち食事療法が最も重要で根幹となります。これがうまくできないと他の治療法は期待できません。2型糖尿病の場合、厳格な食事療法が行われれば、7割以上の患者さんは良好にコントロールが可能です。食べてはいけない物はありませんが、エネルギー摂取量を考慮し、栄養バランスのとれた食事をとることです。
例えば、身長170センチメートル(標準体重63・5キログラム)でデスクワークが多い管理職などの人は、1日に使うエネルギーが1587キロ―1905キロカロリーです。サービス業など立ち仕事が多い人は1905キロ―2222キロカロリー、現場作業など力仕事の人は2222キロカロリー以上となります。
昼にカレーライスを食べれば700キロカロリー、ラーメンを食べれば600キロカロリー。その夜、ハシゴで飲み歩いたら、どうなるのか皆さんお分かりですよね。エネルギー摂取量と食事、栄養のバランスを考え生活することが大切です。
運動療法と言っても日常できるものならどんな運動でも構いません。全身を動かすことをお勧めします。できれば毎日運動を行い(最低でも1週間で3回)、食後1―2時間以内に15―60分間行うと効果的です。継続することがとても大切です。続けることでダイエットにもつながります。詳しくは次週お話しします。
食事療法と運動療法だけではうまくコントロールできない時に、薬物療法を追加することになります。薬物療法には経口血糖降下薬(内服薬)とインスリンなどを注射する自己注射療法があります。1型糖尿病はこの薬物療法が中心となります。
糖尿病はコントロールする病気です。自分自身が病としっかりと向き合って、治療することが大切です。
(文=長谷川修・平成立石病院名誉院長)
日刊工業新聞2015年7月24日/31日