GE副会長が挙げる、企業の課題認識、解決策、市場スピードに合わる6つの方法
世界最強の製造業、新時代のPDCAとは
4. 「過渡期」を生き抜くことに慣れる
既存の組織や手法はデジタル情報の流れに侵食されつつあります。代替策は急速に生み出されてはいるものの十分なスケールには至っていません。新旧を問わず全ての組織はいま「過渡期」にあり、こうした時期こそ、成功するための方法を学ぶ必要があります。
過渡期を生き抜く方法を身につけるには、創発の時代にふさわしい「発想の転換」の徹底が求められます。これは、無難な策または知識の蓄積をもって対応できるとか、直面する可能性や問題への対処に十分な手腕を備えていると過信するような考えを、一切捨て去ることを意味します。
5. 新たなフィードバックループを始動する
フィードバックを恐れる必要はありません。ただし、適切なフィードバックであることを確認する必要はあります。
健全で順応力のある組織はフィードバックを寛大に受け止めます。組織内に流れるシグナルを増幅させるだけでなく、フィードバックを修正したり、その後の行動をさらに改めたりもします。
官僚主義や自分の考えばかりを主張する経営者によって情報の流れが滞る企業では、建設的なフィードバックは実現できません。適応力のある組織を目指すには、「ネガティブな」フィードバックを許容できるよう、一定の条件を設定しておく必要があります。
はじめは、行動を改めさせるようなネガティブなフィードバックを不愉快に感じるかもしれません。好ましくない情報だけでなく、ある程度の失敗も許容しなければなりません。
メディア評論家のクレイ・シャーキー氏の言葉を借りれば、「失敗が選択肢にない」企業文化を「失敗が問題とならない」企業文化へ変えていくこと。失敗が、変化に適合しようとして生じた悪意のない結果であるなら、それは正に組織が健全であることの現れです。
弾力性や回復力を養う過程で、ある程度の失敗はつきもの。フィードバックは組織の「免疫反応」が生み出しているのです。
GEは昨年、社員に対する年に1度の業績評価を廃し、社員一人ひとりが関わりのあるすべての社員とフィードバックをやりとりできるシステムを導入しました。携帯端末からも入力可能でリアルタイムに利用できるので、例えば、私が行動を改めるのに役立つフィードバックを、社員なら誰でも私に送ることができます。
その後、目指した成果を達成できたかどうかや、その理由について尋ねることもできます。重大なフィードバックに際しては、どこからどのように変革を起こせばよいかを示すこともできます。
6. 「Minds and Machines(人と機械の融合)」のパワーを活用する
シミュレーションシステム(多くは新興の企業が手がけています)はより高度になり、リアルタイムに情報を流せるほどになっています。詳細なシミュレーションが金融市場の変化を予想したり、病気の蔓延の予測に役立てられています。
コンピューターゲームが自律的にシナリオ開発できる領域を内包し、ゲーム製作者でさえもその詳細や範囲を把握しきれないような時代です。便利なコンピューターモデルの活用が企業の次のステップになるのも自然なことです。
例えばGEの技術者たちは、デジタル・ツインと呼ぶシミュレーション「エンジン」を構築中です。言わば、ジェット・エンジン、機関車、ガスタービン、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)など、当社のあらゆる主要な技術システムのデジタルレプリカです。
デジタル・ツインはどれも、物理世界に存在する特定のマシンとペアになっていて、例えば、あるジェット・エンジンのデジタル・ツインは、設計、製造方法や製造場所、使用場所、使用履歴、現在の状態に関する情報を内蔵しています。
デジタル・ツインがあれば、個々のパーツが故障しそうな時期や、交換が必要な時期を前もって教えてくれるので、修理や機能停止に費やされるコストや時間を省くことができ、大変便利です。
技術システムにおける人工知能(AI)のこうした活用効果を踏まえ、組織への活用法もちょっと想像してみましょう。組織における一定の部門のデジタル・ツインはすでに構築可能です。したがって、多くの単調作業や試行錯誤、経営のムダをなくすことも可能です。
ウガンダ政府はAIと予測分析とを組み合わせて、ゾウを密猟者から守るためのパトロールの配置を最適化するのに活用しています。
米国では、企業がAIを利用して雇用や社員評価のプロセスを合理化していますし、広告代理店にいたっては、最も多くの人に影響を与えられると判明したテーマに沿った作品制作や広告露出を実現するために利用したりしています。
どこに行ってもパターンは同じで、反復作業は不要になるので、ヒトは仕事を仕上げるうえで必要な技巧や創造力、戦略的思考を提供することに専念できます。
企業にとっても個々の社員にとっても、優れたMOと強力なAIを組み合わせることは、最初は不可能なことに思えるかもしれません。しかし、そのうち必然的なものになり、最終的には揺るぎない存在として確立されるようになるでしょう。
これからの時代、企業は「壊滅的状況や緊急事態に陥り必要に迫られる」よりも早期に、一貫して自発的に、問題解決策を見出すことができるようになるでしょう。
しかし、こうした新たなツールを手にしても、創発的な組織にはやはり適切な人材を雇用し、目的や価値、信念を定義し、インスピレーションや変革の源泉を提供・示唆するリーダーが必要です。
アリのコミュニティや脳細胞に明確なビジョンを持ったリーダーは必要ありませんが、ヒトの組織には、どんなときもリーダーが欠かせないのです。
この記事は米Medium誌に掲載したベス・コムストックの寄稿記事をベースにしています。ここでの見解は、ベス・コムストック個人によるものです。