生物学的製剤で“治る時代”に

　2003年に登場した生物学的製剤はリウマチ治療を一新したといえます。ステロイド剤や免疫抑制剤であるメトトレキサート（MTX）などは、今でも極めて有効な治療薬ですが、特にMTXの併用により生物学的製剤の有効性をさらに増すことができます。

　これら治療の進歩は、病態の解明が進んだことが背景にあります。リウマチは免疫異常がその病因として考えられ、その免疫異常が関節滑膜に起こると、滑膜増殖、骨破壊が進み腫れ、痛みといった症状が出てきます。

　さらに炎症細胞から炎症を引き起こす物質が分泌され、それが細胞間同士のネットワークを形成し病態が広がります。こうした背景から炎症性物質を特異的に捕捉することで、そのネットワークを遮断する抗体製剤が開発されました。

　それが先に述べた生物学的製剤で、現在わが国では7種類、標的物質ごとに整理すると3種類が使用されています。

　今一つ忘れてならないのは診断技術です。かつては血液検査、またレントゲンで骨関節破壊を確認するしかできなかったのですが、MRIによりごくわずかな骨破壊も見つけられ、滑膜増殖、関節液の貯留も容易に見分けられるようになりました。

　さらに超音波検査で血流のシグナルを測定し、増幅していれば炎症が激しいことが分かり、また減衰していれば炎症が終息に向かっていることが分かります。

　リウマチは発症早期に関節破壊が進行するところから、早期から強力な治療を行うことが重要です。早期にこれらの製剤を使用することで関節破壊、並びに変形を予防でき、一度異常がみられた骨がわずかであれば再生・修復も可能となります。

　長期間効果が持続し、薬剤を中止できる患者さんもいれば、はじめに選択した製剤が無効となり、第2、第3の生物学的製剤に切り替えてようやくコントロール可能となる患者さんもいます。こうして、夢にまで見たリウマチが治る時代へと突入することができるようになりました。

　一方変形に伴う機能障害、痛みに対しては、外科的治療が選択されます。動きが悪くなった関節を人工関節に置き換える手術が代表的です。今では、人工関節機種も改良を重ね、股関節、膝関節は20年以上ももつと言われていますし、耐用年数では、劣るものの肘・足・肩・指関節も人工関節で置換できる時代になりました。

　今後も外科手術と薬物治療をうまく使いこなすことで、リウマチの治療をより進めることができるでしょう。
（文＝永島正一・平成立石病院付属リリオクリニック院長）