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「あらゆる手段で債務超過を回避する」(東芝社長)

原発事業は社長直下の組織に。新規建設からは撤退
「あらゆる手段で債務超過を回避する」(東芝社長)

27日夕に会見した綱川社長


“3月危機”から脱しても先行きは不透明


 東芝は2月14日に16年4―12月期連結決算を発表し、同時に米原発事業での最終的な損失額を公表する計画だが、損失額が7000億円規模に膨らんだ最悪のケースを見据えた対策を進めている。債務超過を回避するため、17年3月期末までにどう自己資本を積み上げるか。

 想定されるシナリオはこうだ。16年9月末時点の自己資本は約3600億円。これに足元で業績が上振れしているNANDメモリー事業で利益を確保し、当期利益で2000億円を確保して追加する。さらにNANDメモリーの分社・資本受け入れで3000億円、構造改革の先送りや資産売却によって3000億円を加える。

 これらにより自己資本を1兆1000億円規模まで厚くし7000億円規模の損失を吸収する。ここまでやって過小資本状態を避けられれば、「3月末までの筋書きとしてはベスト」(東海東京調査センターの石野雅彦企業調査部シニアアナリスト)と説明する。

 資産売却についてはグループ企業の保有株式、不動産が主な対象だ。保有株式の売却では売りやすい上場企業はもとより、非上場の子会社を含め幅広く検討する必要がある。

 東芝はビル設備などの社会インフラ、発電設備などのエネルギーの両部門で幅広い製品を手がける。また近年はIoT(モノのインターネット)技術の普及拡大で、異なる製品が“つながる”事例が増えており、業界関係者は「売却先候補には困らない」と指摘する。

 例えばNANDメモリーを分社した後の新会社への出資に関心を示すキヤノンが、監視カメラ事業とのシナジーを狙いに東芝エレベータ(川崎市幸区)にも出資するといったシナリオもあり得る。

  NANDメモリーの分社化・資本受け入れ、資産売却で壁となるのは時間的な制約だ。3月末という“期限”までに、パートナー探し、交渉、売却といった手続きをこなす必要がある。経営スピードを上げられるかが、東芝の生き残りを左右する最大の要因となる。

 “3月危機”から脱却しても、東芝の経営の不透明さは変わらない。NANDメモリーと原発事業を成長柱と位置付けた不適切会計後の経営再建策を練り直す必要がある。

原発事業は今後もコスト増に苦しむ


 最大の焦点は原発事業の位置付け。ステークホルダー(利害関係者)の間では「今後もコスト増に苦しめられるのではないか」との懸念が広がっており、不安材料を払拭することが不可欠だ。

 焦点は今回の損失の震源地となった米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)の取り扱い。東芝はS&Wを買収したことで、機器から工事までの一貫体制を確立したとメリットを説明してきたが、実際にはS&Wの手がける工事のコストが膨らみ巨額損失を招いた。

 機器だけでなく工事まで手がけた方が高い利益率を望めるが、その分リスクも大きくなる。東芝・ウエスチングハウスの本分は機器メーカー。東芝幹部は「原発事業は継続するべきだが、工事ビジネスまで手がけるのは厳しい」と指摘する。
日刊工業新聞電子版2017年1月27日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東芝が会見を開きました。事前に想定された内容です。ただ原発事業の位置付けをどうするか根本的な問題はまったく解決策が見いだせていません。社長直轄にしてもウエスチングハウス(WEC)をコントロールするは難しいでしょう。買収以降もWECはずっと東芝の子会社だという感覚はなかったですから。トランプ政権に代わりWEC問題もさらに不透明になってきました。

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