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グーグルも驚いた!アフリカで知名度No.1の中古車ECベンチャーとは

<情報工場「読学」のススメ#23>日本人の知らないニッポン企業

日本では廃車、ダメもとで掲載


 当初は自社サイトのみで売っていたため集客がままならなかったが、2006年からは中古車輸出専門のポータルサイトに加盟。それをきっかけに徐々に顧客を増やしていった。

 ここで山川さんがとった方法は、他の業者には簡単に真似のできないものだった。中古車はいつ、どんな車が出てくるか予想できない。商品としてサイトに載せるためには、まず現物を手に入れなくてはならない。売れなければ、損失を被ることになる。

 山川さんはビィ・フォアードの他に買取業者であるワイズ山川を経営していた。ワイズ山川にはそれまでに買い取った中古車が山ほどある。山川さんはそれらの写真を撮り「お試し」でどんどんビィ・フォアードのサイトに載せていった。売れなければ、ワイズ山川からオークションに出せばいいだけだ。

 スポーツカー専門店の看板は下ろし、いろいろなタイプの車を試験的に販売することにした。日本では廃車になるような車もダメもとで載せていたが、これがアフリカで飛ぶように売れていく。

 日本では買う人がいないような古い車でも、アフリカでは十分魅力的な商品だったのだ。しかも安い。こうしてアフリカの人たちの心をがっちりと掴んだビィ・フォアードは、成功への道をまっしぐらに進んでいく。
                 

理由は「オイシイ商売のように見えた」


 本書の中に、山川さんの行動指針を象徴するこんな言葉を見つけた。「何でも実際に試してみないと、本当のところはわからないので」。輸出が「オイシイ商売のように見えた」という理由のみで、ワイズ山川に輸出部門を作った時の言葉だ。まず「行動」し、「試して」みる。失敗したらそこから学べばいい。山川さんは、そんな考えのもと挑戦を続けてきた。

 こうした考えは、シリコンバレーのイノベーションを支える「デザイン思考」にも通じるものではないだろうか。『スタンフォード大学dスクール 人生をデザインする目標達成の習慣』(講談社)によれば、デザイン思考の震源地として知られるスタンフォード大学dスクールの基本原則の一つに「行動重視」がある。

 これは「正しい行動の道が開けるのを何もせずに待つより、何か行動を起こして失敗するほうがいい」ということを意味する。

 また、デザイン思考のポイントの一つには「プロトタイプ」がある。プロトタイプは見本や雛形を意味し、まず考えたことを試しに形にしてみて、それに対する反応や不具合などから学び、修正していく。これも、まさに山川さんのやってきたことだ。

 おそらく山川さんは、とくにデザイン思考を意識して事業アイデアを練っていたわけではないだろう。日本発で新興国・途上国を相手に商売をするビィ・フォアードは、シリコンバレーのスタートアップのイメージからは遠いような気もする。

 だが、この両者の根っこにあるものは共通している。ビィ・フォアードは図らずもデザイン思考の優れた実践例を提供したともいえるだろう。
(文=情報工場「SERENDIP」編集部)
『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業』 山川 博功 著
講談社(講談社+α新書) 208p 840円(税別)
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冨岡 桂子
冨岡 桂子 Tomioka Keiko 情報工場
ベンチャー経営に参画している者としていろいろな場面に遭遇し、わかったことがあります。それは、ビジネスはロジカルには進まないということ。綺麗に矛盾なく事業計画を立てられても、0から立ち上げるビジネスに対しては、今の状況から類推できることをベースにした予想でしかありません。市場(海外)をコストをかけてじっくり調べる余裕はないし、変化の激しい今の時代、状況は変わっていきます。なので、山川さんの言う「何でも実際に試してみないと、本当のところはわからないので」にはとても共感します。新規事業を開発する企業にもあてはまるのではないでしょうか。山川さんが成功したのは、ミャンマーで中間業者に騙されたり、ニュージーランドで損失を出しても、チャンスがあると考えて、海外展開をやめなかったことでしょう。ロジカルに事業計画を追っていたら、騙されたり損失を出した時点で撤退し、結果を出せていなかったかもしれません。

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