東芝「半導体分社」、ソニーとの明暗
かつては「セル」で蜜月。成長のけん引役は東芝出身者
会社の形を大きく変える
4月、ソニーは会社の形を大きく変える。デジタルカメラなどイメージング事業の子会社化をもって、全事業の分社化が完了する。狙いは経営責任の明確化と意思決定の迅速化だが、縦割り意識の再燃という懸念もある。各事業が機動的に動きつつ、横串を通して新たな価値をいかに生み出すか。ソニーの経営陣は真価が問われる。
発端は経営課題だったテレビ事業にある。赤字を解消するため拡大路線を突き進んだ結果、資金の流れや商流が複雑になり、責任も不明確になった。分社化して意思決定を速めたことで、生産拠点と普及価格帯モデルの大幅な縮小を決断。販売台数ではなく利益を重視する経営に転換し、テレビ事業は2014年度に黒字に転じた。これが全事業分社化の契機となった。
ただ、分社で損益を健全化するだけでは“普通の会社”で終わってしまう。社長の平井一夫も「分社化は手段であり、目的ではない」と断言する。
では、さらなる成長のために必要なことは何なのか。平井が考えるのは事業間の融合だ。例えばデバイス技術はカメラやゲームなど、すでに複数の事業の基盤として機能している。
また16年4月に発足したソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ(東京都港区)も重要な役割を果たしつつある。国内外の電機関連製品の生産技術開発や生産管理、調達機能を一元化しており、事業間融合の象徴とも言える。社長の岸田光哉は「各事業との連携を強化し、我々がプラットフォームとなって分社後の運用を支える」と力を込める。
仮想現実感(VR)やロボット、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)を軸とした事業横断プロジェクトも次の成長を支える領域だ。5―10年後の次世代まで事業間の融合を継続できるかどうかは、各事業を有機的につなぐ仕組みがカギとなる。
一方、分社化は経営の部分最適に陥って、各事業がバラバラに走りだす恐れがある。しかし、平井は「今のマネジメントチームは分社する前から一緒に仕事してきた。行ってしまって帰ってこないということは全くない」と一笑に付す。
遠心力が生み出すダイナミズムを生かしつつ「ワン・ソニー」というスローガンにより一体感を醸成する。当然、その中心にいる平井には、従業員らを惹(ひ)き付ける求心力が求められている。
(敬称略)
日刊工業新聞2017年1月19日/25日