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中・四国経済にみる「地方が幸せになる」広域連携 

経済界トップが語る2017年。「地方創生のチャンスはどこにある?#03」

四国経済連合会 千葉昭会長


 四国の景気は緩やかな回復傾向にあるが、全国に先行して進む少子化や人口減少、インフラ整備など課題も多い。地方創生の旗振り役としてどのように次の一手を繰り出すか。四国経済連合会の千葉昭会長に今後の展望と取り組みを聞いた。

 ―2017年の四国経済の見通しは。
 「16年12月の四経連景気動向調査では、四国の景気が『既に回復』『回復傾向』とみる企業の割合が58%と半数を上回っており、四国の景気は緩やかな回復傾向にある。ただトランプ新政権による米国の政策転換、円安や原油価格上昇によるコスト高、人手不足感の強まりなど懸念材料も多く、先行きを注視しなければならない」

 ―人口減少問題への取り組みは。
 「四経連の呼びかけで設立した官民一体の四国少子化対策会議が中心となって、出生率引き上げや若年人口の流出防止に取り組んでいる。16年は子育てと仕事の両立支援に取り組む先進的企業の表彰、管理職の意識啓発を促すシンポジウム、大都市圏との大学定員格差是正などを求める国への要望活動を行った。今年は、四国の優れた企業を紹介する冊子を作成して若者に配布したり、大学と連携して学生に地元就職を促す取り組みを進める」

 ―四国新幹線の整備計画への早期格上げなど、インフラ整備の重要性を訴えています。
 「四国ではインフラ整備の遅れが地方創生を進める上で大きなハンディとなっている。高速道路『四国8の字ネットワーク』の整備率は7割にとどまっており、ミッシングリンクを早期に解消する必要がある」

 「新幹線については、四国が全国唯一の空白地帯として取り残されている。国が新幹線による『地方創生回廊』の構築を掲げている今のタイミングを逃すことなく、四国の新幹線の早期実現に向けて四国4県や他の経済団体などとも連携し、国への要望活動をさらに強力に進める。今年は東京でのイベントも予定しており、我々の危機感や熱意を四国内外に広く発信していきたい」

 ―今年の抱負は。
 「『四国はひとつ』の理念を掲げる四経連は、四国の4県や産学官の力を結集する要。同時に四国の考えや要望などを政府与党や経団連など中央に伝える橋渡しの役割を担ってきた。こうして四国内外との連携を一段と強化するとともに、会員の四経連活動への積極的な参画、事業推進へのお力添えをいただくことにより、四国を取り巻く諸課題の解決に全力で取り組みたい」
四国経済連合会 千葉昭会長

 【記者の目/地元優良企業の魅力発信を】
 四国の人口は現在380万人前後だが、40年には300万人を割り込むと予測される。四国には素材関連で高い競争力を持つ企業やニッチトップ企業も多く集積。若者にいかにその魅力を伝えるか。四国全体の知恵出しが必要だ。人口減少対策や産業・観光振興にはインフラ整備も喫緊の課題。地元財界の要となる四経連の活動への期待は日増しに大きくなっている。
(文=高松支局長・斉藤伸介)
日刊工業新聞2017年1月17、19日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
中国経連の苅田会長の発言「軋轢(あつれき)はあるが、まずは仲立ち役として、この地方が幸せになる広域連携のために、具体論で首長を説得する“行動”を起こしたい」。 「軋轢」とは、なかなか強い言葉だなと思ったが、それだけ各県が内向きということの表れか。自治体はどうしても自分の県域にこだわる。当然といえば当然だが、無意味なこだわりで他県と連携できないことは多い。企業が国境なき勝負を求められる時代に、県の境が邪魔をするというのは生産的ではない。自治体間の無用な壁に対しては企業が積極的に行動すべきだと思う。

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