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なぜ不整脈である心房細動が脳梗塞の原因に?

抗血栓療法の服用では納豆が食べられないことも

発作性段階なら85%根治


 次に心房細動の治療の二つ目の柱である「カテーテルアブレーション」についてお話しします。

 心房細動が起きる場所は、左右で二つある心房のうち、左側にある左房です。左房には、肺から合計4本の肺静脈が流れ込んでいて、この肺静脈から異常な電気興奮が発生し、それが左房へ侵入することにより心房細動が起きることが分かっています。この異常な電気興奮こそが治療のターゲットです。

 カテーテルは、シリコンなどでできている細い管のことで、足の付け根の太い血管から、先端に電極をつけたカテーテルを挿入し、血管の中を伝って心臓まで到達させます。

”全ての道はローマに通ず“ではありませんが、全身の血管はすべてポンプである心臓へとつながっていることは、当たり前ですが意外な事実です。

 カテーテルの先端の電極を、肺静脈と左房とが合流する部位にうまく持っていくように操作し、電極から高周波と呼ばれる電気を流します。電極が触れている直径5ミリメートルの範囲の心筋が焼灼(しょうしゃく)されて、電気を通さなくなります。

 この電気を通さなくなった焼灼ポイントをひとつひとつつなげていくことで、肺静脈と左房との間で異常な電気興奮をブロックして、心房細動を防ぎます。これを「電気的肺静脈隔離術」と呼びます。

 心房細動は、三つの段階で進行します。最初は発作性です。放っておくと徐々に発作の頻度が増えて、持続時間が長くなっていきます。そして発作が1週間以上続くようになったのが持続性となります。

 さらにその状態で2年間以上経過すると、もとに戻れない永続性となります。発作を繰り返し、心房が傷んでしまうと、もう後戻りできなくなってしまいます。

 発作性の段階であれば、85%程度は根治が可能です。2回以上の治療が必要な場合もあります。しかし、持続性になれば痛んでしまった心房にも処置を追加しますが、効果は発作性にはおよびません。

 心房細動は、適切な時期に適切な治療を受けることで治すことができる病気です。今回お話しした「肺静脈隔離術」は、カテーテル操作が難しい左房内での手技のため、行える施設が限られていますが、当院はその治療を積極的に行っています。

 また、患者の苦痛を軽減するために全身麻酔を用いることもあります。積極的治療を受けるかどうか、納得いくまで専門医と相談することをお勧めします。
(文=堀江格・南町田病院内科循環器科集中治療室)
 
日刊工業新聞2016年2月12日/19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ワルファリンの薬納は知らなかった。納豆好きとしては気になる情報。

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