統合型リゾートとカジノ、日本の未来を決めるのはどっち?
<情報工場「読学」のススメ#22>著者・高城剛、シンガポールの成功事例とは
地方創生に結びつくIR、魅力づくりの工夫を
日本でのIR設置については、本書に紹介された海外の諸事例などを参考にしながら、国民一人ひとりが賛否、あるいは日本版IRのあるべき姿を考えていけばいいだろう。
ただし、設置するのであれば、シンガポールにならった厳しい規制は導入しなければならない。日本の場合、現状でも賭博がらみで反社会的勢力が暗躍しているからだ。カジノは、あくまでIR運営の財源にあてるツールと位置づけて規制のもとに置き、それ以外の施設をメインに議論していくのがベストだろう。
すでにいくつかの自治体が誘致に手を挙げているが、IR設置にあたっては、都市部で利便性を追求するよりも、地方創生に結びつける視点が重要だと思う。温泉など、すでにある観光資源を生かした魅力づくりに知恵をしぼるべきだ。
本書には、米国で廃墟となった鉄鋼工場の跡地をそのままIRに流用して人気を博しているケースも紹介されている。日本の自治体がハコ物を手がけると、どこも同じようなものになりがちだ。
だが、日本版IRは、いま世界のあちこちで作られているIRと競争していかなければならない宿命にある。差別化の工夫が絶対に必要だ。そうした工夫がさまざまな地方で行われるだけでも、日本全体が活性化していくのではないだろうか。
(文=情報工場「SERENDIP」編集部)
高城剛著(集英社 240p 1,400円(税別)>
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