アナリストが予想する「2017@テクノロジートレンド」
ガートナー・リサーチ部門バイスプレジデント兼最上級アナリスト 亦賀忠明氏
【3】メッシュ
(人とビジネス、デバイス、コンテンツ、サービスとを結び付け、デジタル・ビジネスの成果を提供するための3次元空間でのインテリジェント・デジタル・メッシュ)
7.会話システム
現在の代表的な会話技術として、アップルの「Siri」、グーグルの「Google Now」、アマゾンの「Alexa」、それにマイクロソフトの「Cortana」などが存在する。これらは今後さらに賢くなり、文脈に沿った話し方ができるようになる。それに伴って、モバイル機器やクラウド上でユーザーに音声サービスを提供するアプリとコンテンツが急増する。
現在使われているハードウエアのインターフェースはマイクやスピーカーが付いたデバイスだが、従来型のパソコンや、スマートフォン、タブレットといったモバイル機器の枠を超え、幅広いエンドポイントに会話技術が対応するようになる。5年後には新しいタイプの会話デバイスのイノベーションが起こるとみている。
8.メッシュアプリとサービスアーキテクチャー(MASA)
マルチユーザーに対して、複数のデバイス、複数のネットワークに対応したマルチチャンネルのソリューション・アーキテクチャー。
モバイルやデスクトップ機器、それにIoTなどのアプリが、バックエンドサービスの幅広いメッシュにリンクし、複数のレベルでAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース)を提示して、ユーザーにはデスクトップ、スマートフォン、自動車など目的のエンドポイントに最適化されたソリューションを提供する。異なるチャンネルをユーザーが移動する場合でも継続的なサービスを受けられる。
9.デジタル・テクノロジー・プラットフォーム
デジタル・ビジネスの基本的な構成要素を提供するとともに、デジタル・ビジネスを実現するのになくてはならない重要な存在。
ガートナーではデジタル・ビジネスのビジネスモデルを実現するのに必要な五つのプラットフォームとして、「情報システム」「カスタマー・エクスペリエンス」「アナリティクスとインテリジェンス」「IoT」「ビジネス・エコシステム」を挙げている。
10.アダプティブ・セキュリティー・アーキテクチャー
インテリジェント・デジタル・メッシュおよび関連するデジタル・テクノロジー・プラットフォーム、アプリケーション・アーキテクチャーによって、これまでにない複雑なセキュリティーの世界が形成される。
ハッカー産業が進化し、洗練されたツールによる攻撃が増えることで、セキュリティーの潜在的な脅威は増大する。従来型のセキュリティーでは不十分であり、企業などの組織は、セキュリティー検知型のアプリケーション設計や、自衛型のアプリケーション、ユーザーと接続端末の挙動分析、API保護、それにIoTやインテリジェントなアプリおよびインテリジェントなモノの脆弱性に対処する具体的なツールと技法が必要になる。
X.対応の後れ目立つ日本企業
亦賀さんによれば、上記のトレンドは「いずれも2017年から2020年にかけて重要な問題になるものばかり」とのこと。その半面、日本企業の経営層の認識はまだまだ低いようです。
特にありがちなのが、「いくら儲かるのか、事例はあるのか」「ドイツだってインダストリー4.0と言いながら、まだ何も出来ていないじゃないか」といった短期的なものの見方だといいます。
「今、グローバルでデジタル技術を駆使した産業のトランスフォーメーション(変化)が起こっていて、欧米企業は5年から10年、15年のスパンでそれを実現しようと考えている。テクノロジーの進化は誰にも止められないし、もはや製造業は良いモノを作って売ればいい、という時代ではない。マインドセット(考え方)を変えないと、日本企業は世界に置いていかれることになる」。亦賀さんはこう危機感を露わにします。
(文・藤元正)
日刊工業新聞電子版2017年1年9日