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経営者たちが新成人に薦めるこの一冊


『道をひらく』(松下幸之助著)


NTTファシリティーズ・一法師淳社長

 松下幸之助さんのベストセラーとして知られる。時代背景は戦後復興、高度成長期で今とはまるで違うが、ここに書かれていることは今でも通用する人生・仕事・経営訓だ。

 「とらわれず素直に謙虚に、希望をもって生きる」「広い視野をもつ」「辛抱強く、根気よく」「自分のため、人のため、世の中のために、志を立てる」「プロとしての自覚」など、読む人の立場や年齢の違いがあってもそれぞれの心に染み入る名言の数々がある。

 人生の節目節目で読み返してほしい。その時ごとに新しい発見があるはずだ。弊社の行動指針(公明正大、誠心誠意、三現主義)にも通じる。

『経営も人生も「ひねらんかい」 セプテーニ70のルール』(七村守著)


●山口大学・岡正朗学長

 インターネットマーケティングのセプテーニグループ創業者の七村守氏が、人生を振り返り「ひねらんかい(知恵を出そう)」と読者に呼びかけた書だ。がむしゃらに働いた若い頃、時間厳守など当たり前のことをやって企業を成長させた時代、社会的意識が高まった昨今―と氏の変化が描かれる。

 ビジネス書は20歳前後では手に余るものが多いが、これならさっと読める。自身も山口大在学中に経済的に苦労したことから「七村基金」創設となったが、春・夏休みは自分で稼ぐようにと奨学金は9カ月分だ。先輩の経験談として若い人が一歩、踏み出す後押しになればと思う。

『都鄙問答(とひもんどう)』(石田梅岩著)


●首都圏産業活性化協会(TAMA協会)・吉田善一会長

 石田梅岩は江戸時代中期に活躍した思想家で、神道や仏教、儒教を融合した「石門(せきもん)心学」の開祖でもある。幼い時にはでっち奉公に出た苦労人だ。梅岩が開設した私塾「心学舎」には身分の差に関わりなく、勉学に励んだと言われている。

 商人道を説く同書には「商人は自分だけでなく、相手の利益も願うものだ」という内容がある。近江商人の「三方良し」の理念に通じ、今で言えば企業の社会的責任(CSR)になる。商人の心得に加えて、心学の観点から“心の見つけ方”も書いてある。自分とは何者か、自身の基軸を見つけるヒントになる良い一冊だ。

『小説 上杉鷹山』童門冬二著


●日本自動車部品工業会・志藤昭彦会長

 上杉鷹山(ようざん)は財政がひっ迫する米沢藩藩主として改革に取り組む。失敗を繰り返しながらも藩民を大切にし、困難にくじけず財政を立て直した。私は鷹山の「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」を座右の銘とし、目標は必ず達成できることを会社経営で実践してきた。志を貫けるよう新成人の皆さんにも理解し、実践してもらいたい。

 また若くして藩主となった鷹山の部下はすべて年上。慣習にこだわり改革が進まない人たちを辛抱強く説得したが、今の日本も同じような状況だと思う。皆さんには新しい目で社会を見つめ、改革していってほしい。
日刊工業新聞2017年1月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
昨日、たまたまウォンテッドリーの仲さんが高校生向けに話す講演を聞きました。若い時にできるだけ「空間」を広げよて自分なりの美学を持つことがとても大切だと。読書は「過去」と「未来」をつないで時間を広げる。旅は空間を広げると。

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