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世界で加速する高速炉開発。どうなる日本の“ポストもんじゅ”

日本はフランスと共同で実証炉、費用負担などで課題多く
世界で加速する高速炉開発。どうなる日本の“ポストもんじゅ”

アスリッドのイメージ図(国際原子力機関<IAEA>の資料を基に作成


「フランスにお金だけ搾取され、知見を得にくいのでは」


 日本の高速炉開発の歴史は、実験炉「常陽」(茨城県大洗町)に端を発する。常陽では高速中性子による燃料や材料の開発などが可能。消費した燃料以上の燃料を生み出す国内初の高速増殖炉として基礎研究を目的に建設された。

 しかし、07年発生のトラブルで現在も運転を停止している。その後、原型炉もんじゅを建設したものの、機器の点検漏れなど不祥事が相次ぎ16年に政府が廃炉を決めた。

 そこで、日仏の企業・政府が共同で開発を進めるのが、ナトリウム冷却高速炉「ASTRID(アストリッド)」だ。日本原子力研究開発機構三菱重工業、仏アレバNPなどが参画する。フランス国内で22年ごろから建設をはじめ、30年頃の運転開始を目指す。

 アストリッドは高速炉の最終段階である商用炉に向け、採用する候補技術や安全性の実証をはじめ、照射技術や技術実証に活用する。

 日本政府が期待を寄せるアストリッドだが、建設するかは19年に判断する。課題の一つは日仏両国の建設費の分担割合だ。建設費は明らかになっていないが、もんじゅの建設に5886億円がかかっており、アストリッドも数千億円規模となるのは確実。日本側もそれなりの負担を覚悟する必要がある。

 このため有識者からは、「日本の資金に頼っている印象があり、フランスのやる気が見えにくい」(東京工業大学先導原子力研究所の小原徹教授)、「フランスにお金だけ搾取され、知見を得にくいのでは」(日本原子力学会の藤田玲子元会長)と懸念の声も。
高速増殖実験炉「常陽」(原子力機構提供)


「核燃料サイクル」が根幹


 また、「建設が30年代より遅れると、(中国などの台頭で)フランスがイニシアチブを取れなくなる」(原子力機構の佐賀山豊特任参与)との指摘もある。

 仮に費用負担の問題が合意に至らず、アストリッドが建設されないとなれば、政府の計画は大幅な見直しが避けられない。

 日本の原子力政策は、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」が根幹となっている。プルトニウムを燃料とするもんじゅはその要と位置づけられてきた。

 日本はプルトニウムを15年末時点で国内外で48トン保有しており、仮に核燃料サイクルを放棄すれば国際社会に不必要な懸念を抱かせる。資源小国の日本にとって電力の安定供給の観点から、中長期的に原発の利活用は不可欠のため、核燃料サイクルの推進を着実に進める必要がある。

 一方で、多額の税金を食いつぶしたもんじゅの二の舞いは絶対に許されない。もんじゅの失敗を教訓に、官民挙げた高速炉の開発の推進が求められる。
(文=福沢尚季)
日刊工業新聞2017年1月6日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本の実証炉開発については「もう一度、原型炉を作り直すべきでは」(日本原子力学会の藤田玲子元会長)と、原型炉を満足に稼働させられなかった反省を踏まえた慎重な判断を求める意見もある。 (日刊工業新聞科学技術部・福沢尚季)

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