黒子に徹していた電子部品各社、IoTの主役へ。やらない理由がないほど環境整う

センサーとモジュール化で技術的なハードル下がる。他社に売るよりまず自社で

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アルプス電気のIoTスマートモジュール。拡張性が高く、簡単にカスタマイズできる

村田製作所がクラウドファンディング


 画期的なIoT製品の開発を促すプロジェクトも広がっている。村田製作所はサイバーエージェント・クラウドファンディング(東京都渋谷区)が運営するクラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」と共同で「プロトタイプアイデアコンテスト!」を実施。

 選定された製品や企画のハードウエア製作、テストマーケティングを支援する。また起業を支援するサムライインキュベート(東京都品川区)とも連携。IoT分野での新事業のアイデアを生み出すプロジェクトをイスラエルで開催した。

 電子部品各社が商機を見据えて事業を活発化する中、自社工場でもIoTの利用が目立ってきた。センサーなど自社製品を生産設備に搭載し、工場のスマート化を進めている。
                  


TDK、自社工場を先行自動化


 TDKは2017年秋をめどに、積層チップ部品やフェライト材料の主力工場を担う本荘工場東サイト(秋田県由利本荘市)と稲倉工場東サイト(同にかほ市)の生産管理システムを刷新する。フォトセンサーや圧力センサーなど自社製品を搭載した製造装置を開発・導入し、工程ごとにセンシングして生産段階で不良品を削減する。

 最終的には国内外の全拠点にIoTネットワークを構築。本社でデータを一元的に管理・分析して予兆診断などに活用し、新製品の立ち上げ時や量産移行時の不良率を抑制する。TDKの石黒成直社長は「(製品の検査ではなく)生産のセンシング」と位置付ける。

 太陽誘電でも生産プロセスから製品を変革する「スマートプロダクト」を掲げ、16年から工場のIoT化を本格的に進めている。16年3月に生産子会社の新潟太陽誘電(新潟県上越市)にIoT技術を導入した工場を稼働させたほか、玉村工場(群馬県玉村町)など既存の工場のIoT化にも着手した。

 青柳卓司玉村工場長は「着実に効率化・自動化が進んでおり、設備が12時間近く自動で稼働するなど人が介在する工程は時間的に少なくなった。さらなる高効率な生産に向け、センサーの設置などに投資したい」と意気込む。

 またIoT化に伴い、思わぬ副産物もあった。IoT化の進展に伴い、1000マイクロファラッド(マイクロは100万分の1)の電解コンデンサーの新たな生産方法についてヒントを得た。これにより量産化に向け、効率的な生産技術をいくつか創出できたという。

 工場や自動車、家電などにIoT技術が搭載される中、電子部品の役割も広範になり、重要性が増している。TDKの石黒社長は「センサーはソリューションの中核になる。電子部品の要素技術がもたらす恩恵は大きい」と説明する。IoTの進展に伴い、世界市場を寡占する日本の電子部品各社が、社会課題を解決に導くけん引役になる可能性もある。
IoT化が進むTDKの本荘工場

(文=渡辺光太)

日刊工業新聞2017年1月4日

COMMENT

八子知礼
INDUSTRIAL-X
代表

 新しい通信サービス、センサーと通信一体型のモジュール、ベンチャーによるものづくりの支援体制、そして自社工場のIoT化。技術的な選択肢のみならず実行環境や支援体制なども視野に入れると既によりどりみどりのラインナップだ。これまでの新しい技術コンセプトやビジネスモデルはなんらかの技術的なハードルがあったが、IoTの場合には既にこの数年確立されてきたクラウドと、スマホによって培われたセンサー技術およびそのモジュール化が存在し、あとはアイデアと組合せでビジネスモデルを作る環境は整っている。そこがこれまでと大きく異なる。他社にいきなり持っていけなければ自社でやるのも、極めて真っ当なオーソドックスなやり方だ。ここまでくると取り組まない企業の方が理由を聞きたくなる。かつての日本がそうだったように新しいことに貪欲に取り組み柔軟に変化できる企業のみが生き残っていく。もはややらない理由はない。

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