トヨタとホンダ、“脱・自前主義”の危機感
「デジタル化社会でトヨタという会社はアベレージ以下」
自動運転、AIの人材確保へ
ホンダも最近、オープンイノベーションを打ち出している。先月は米グーグルと完全自動運転の公道試験を一緒に進めると発表。昨夏には車が感情を持って運転者と会話する人工知能(AI)の研究をソフトバンクと始めたとも発表した。
ソフトバンクの説明会で松本宜之ホンダ専務執行役員は「オープンイノベーションをさらに強化する」と強調。AI研究強化に向け人材を確保しやすい都内にオープンイノベーション拠点を開設する計画。
イノベーションの聖地シリコンバレーの拠点では成果が出始めている。ホンダシリコンバレーラボ(HSVL)の杉本直樹シニアプログラムダイレクターが「車を決済端末にしてしまおうという発想から始まった」というのはビザとのコラボ。
車で買い物ができるシステムだ。有効なシーンは例えばファストフードのドライブスルーだという。米国では時間帯によっては行列ができる。「機会損失を減らすために走っている最中に注文して支払いも済ませてしまう。並ぶ必要もない」(同)。
ベンチャーが自由に商売できる環境に
アプリ開発ベンチャーと組んでスマホ本体をダッシュボードに簡単にはめ込んだり外したりでき、ハンドルにあるボタンで操作できるシステムも開発中だ。スマホは持っているが車に極力お金を掛けたくない客層に訴求できるという。いずれも市販化の検討中だ。
スマホと車の連携と言えば、車載モニターを通してスマホが使える米アップルの車載ソフト「カープレイ」やグーグルの同「アンドロイド・オート」がすでに商品化されており、ホンダだけでなく各ブランドで採用が広がっている。杉本氏はプロジェクトの初期段階から参画しており「商品の魅力向上につながっている」(同)という。
HSVLでは協業先のベンチャーに、試作費用やテスト車両、ホンダ開発者の経験を提供しアイデアを早期に実現しやすい環境を整える。「スピードが勝負。ベンチャーが自由に商売につなげられるような環境にしないといけない」(同)という。
「いつまでも全部自前で生きて行けない」とはホンダ幹部。独自路線を歩んできたホンダもオープンイノベーションを重視する姿勢を鮮明にしている。
(文=池田勝敏、名古屋・伊藤研二)
日刊工業新聞2017年1月1日