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トヨタとホンダ、“脱・自前主義”の危機感

「デジタル化社会でトヨタという会社はアベレージ以下」
トヨタとホンダ、“脱・自前主義”の危機感

トヨタネクスト発表会での村上トヨタ常務役員(中央)

 トヨタ自動車ホンダがオープンイノベーションを強化している。トヨタはサービスの共同開発先の公募をはじめ、ホンダは都内に研究拠点の開設し、シリコンバレーではベンチャーが開発しやすい環境を整える。自動運転やつながる車などの新分野の台頭でオープンイノベーションが求められているのは車業界に共通した事情。だがとりわけ自前色の強いトヨタとホンダのオープン化からは業界に押し寄せる変化の大きさが垣間見える。

 トヨタ自動車は国内での新たなモビリティーサービス開発に向けオープンイノベーションプログラムを始める。これまで自社ですべてを賄おうとする「自前主義」へのこだわりが強かったトヨタが、外部の企業や研究機関などにアイデアを求める。背景には自動車産業が激変する中、トヨタは自前だけでは生き残っていけないとの強い危機感がある。

 「トヨタが80年間続けてきたビジネスモデルだけでは、もはや通用しない時代に突入しつつある」。2016年12月、オープンイノベーションプログラム「トヨタネクスト」の発表会で村上秀一常務役員は、こう強調した。

 自動運転、電動化、つながる車などの進展によって、自動車産業は100年に一度とも言われる大転換期を迎えようとしている。トヨタは自らのビジネスモデルを変革しなければ、そうした社会の変化に追随できなくなるとの危機意識を抱く。

 これまで自前で開発し提供してきた国内のサービスについても「お客さま目線で開発できていないサービスや、世の中の変化に柔軟に対応できていないサービスがあった」(村上常務役員)。トヨタは真に求められる新しい発想のサービスを、スピード感を持って創出するため外部の力が不可欠と考えた。

当たり前みたいなものを覆してやる


 高齢者らの事故低減や車の利用促進などをテーマにアイデアを募る。企業の規模の大小は問わず「トヨタが持っている自動車業界の当たり前みたいなものを覆してやるといった気概を持った方と一緒に仕事をしたい」(浦出高史デジタルマーケティング部長)と呼びかけた。

 トヨタはつながる車から取得するビッグデータや国内約5200店の販売店網などの資産を提供し、選定した企業と共同で新サービスを創出する。

 サービスだけではない。「外部のいろいろな方々から学ばせていただきたい」(村上常務役員)と協業を通じて自社の仕事の進め方変革を図る。村上常務役員は「デジタル化社会などの流れから見ると、トヨタという会社はアベレージ以下」との認識を示す。

 外部のパートナーと新サービスを開発する過程でそのパートナーの仕事のスピード感などを学び、大企業病に陥りつつあるトヨタ自身の変革にもつなげる考えだ。

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日刊工業新聞2017年1月1日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
オープンイノベーションは10年以上前からIT分野で先行していて車業界でも今に始まった潮流ではない。周囲のオープン化をよそにトヨタとホンダは「系列という垂直統合モデルで成功してきた異質な存在だ。だが弱い分野は異業種の力を借りざるを得ない」と指摘するのはサプライチェーンやイノベーションに詳しい立命館大学の佐伯靖雄准教授。自前色の強い両社でさえオープン化を余儀なくされるほど自動車業界は変革を迫られている。

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