なぜインフルエンザは特徴を変え毎年流行するのか
2種類のたんぱく質の突起がヒトの免疫機構から生き延びる
感染を防ぐ心得
インフルエンザウイルスの感染経路としては飛沫(ひまつ)と接触感染があります(空気感染があるとする説もあり)。
くしゃみや咳(せき)によって飛び散ったウイルスを含む唾液などの小粒子(飛沫)が、1回のくしゃみで200万個発生して2メートル以内の距離であれば直接感染します。これを飛沫感染といいます。
感染しても発症するまでに1―2日程度の潜伏期間があり、その間に体内でウイルスは急速に増殖しているため、発症する前でも飛沫で次の人を感染させてしまいます。
そのためインフルエンザ流行期にはマスク着用などの「咳エチケット」が重要です。マスクを着用していない時のとっさのくしゃみなどは、衣服の袖で口と鼻をカバーして周囲に飛沫を散乱させないようにしましょう。「咳エチケット」は社会全体を守るために意外と大事なことです。
接触感染は飛沫が付着したものに触れることによって感染することをいいます。気を付けたいのは手がよく触れる場所の手すり、ドアノブ、電話などで、表面のウイルスはしばらく生存していますから流行期にはその表面の清掃回数を増やし、手洗い、アルコール製剤などで手指消毒をすることが大切です。
インフルエンザウイルスが冬に流行するのは低温、乾燥環境で生存率が高くなるためだと言われていますので、暖房はもちろん加湿器を使用してウイルスの生存率を下げるのも有効です。
厚生労働省や行政が発するBCP(事業継続計画)に関するガイドラインでも、職場の清掃、消毒を具体的な感染防止策にあげています。そのほか、継続計画には業務の縮小休止の検討、迅速な意思決定が可能な体制づくり、従業員に対する定期的な教育・訓練を実施するなどの記述があります。
予防方法としては、まずワクチンを流行前に接種することが大切です。ワクチン接種後効果が出るのに2週間はかかるので、接種がまだの人はお早めに接種されることをお勧めいたします。
(文=森本泰介・医療法人社団直和会 平成立石病院内科)
日刊工業新聞2015年12月4日11日の記事を一部編集