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なぜインフルエンザは特徴を変え毎年流行するのか

2種類のたんぱく質の突起がヒトの免疫機構から生き延びる
また今年もインフルエンザ流行の季節がやってきました。例年12月から流行が始まり、1―2月にピークを迎えます。感染者数は国内で推定1000万人、そのうちなんと約1万人が直接的または間接的にインフルエンザの流行によって死亡しています。悪寒を伴う高熱、全身倦怠(けんたい)感となり急激に発症して、鼻水、せき、咽頭痛、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状が見られます。

 インフルエンザはなぜ毎年こんなに流行するのでしょうか。からだにはウイルスの特徴(抗原)を見分けてそれに合った抗体をつくり、感染を防いだり、回復を早めたりする仕組み(免疫機構)があり、予防接種はこの仕組みを利用したものです。

 しかし、インフルエンザウイルスは、その表面にあるHA、NAという2種類のたんぱく質の突起が、ヒトの免疫機構から生き延びるために毎年マイナーチェンジをして特徴を変えています。毎年流行するのはそのためです。

 マイナーチェンジをし続け、生き延びるだけでも困っているのに、数十年に1度フルモデルチェンジをすることがあります。それが新型インフルエンザと呼ばれ、感染は拡大し、世界的大流行(パンデミック)となります。

 過去の大流行は1918年、57年、68年にそれぞれ起き、そのうち最も流行したインフルエンザは18年に猛威を振るったスペインかぜです。全世界人口約20億人の時代に感染者6億人、死者4000万人、日本での死者38万人というとんでもない大流行となりました。

 記憶に新しい2009年新型インフルエンザの全世界での死者数は2万人でしたので桁違いです。

 2003年以降、アジアで人への感染が見つかった鳥インフルエンザは「人へはうつらない」はずが、「人から人へうつらない」に変わり、その後「人から人へ感染」と考えられるケースがわずかですがありました。この鳥インフルエンザがパンデミックを引き起こすのは、もう秒読み段階ではないのかと言われています。

 厚生労働省の試算によると、今後パンデミックが起きた場合、日本の全人口の約25%が発病し17万―64万人の死者が出るとされています。

 パンデミック時の企業の事業運営方針や対応などをあらかじめ取りまとめた計画をBCP(事業継続計画)といい、すでに策定している企業がかなり増えてきています。

 いつ起こるかも知れない脅威となる感染症での混乱は、最小限にくい止めなければなりません。

日刊工業新聞2015年12月4日11日の記事を一部編集
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
この冬、鳥インフルエンザが国内で大流行している。WHOは「人への感染は低い」としている。ただ過去にはが中国で人に感染した例が報告されている。記事にもあるように、ウイルスが変異する場合も考えられるだけに注意が必要。

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