「国家戦略特区」それぞれの通信簿
計画進むも成果は本当に刈り取られるのか
【大阪府】「民泊」2泊3日以上」に
大阪府は16年4月1日、大阪市は同年10月31日から、国家戦略特別区域法に基づく外国人滞在施設経営事業の認定業務を始めた。いわゆる「特区民泊」で、国家戦略特区内のマンションなどの一室での民泊営業を可能にし、訪日外国人客の滞在施設とする制度だ。
12月上旬現在で、府は4施設者で6部屋、市は3施設者で8部屋が民泊可能な部屋として認定している。「予想に比べ少ない」(大阪市担当者)のは、事前説明会や消防法などの条件の厳しさもあるが、滞在期間が「6泊7日以上」と長く、訪日外国人客の実態に合っていない点にある。
そこで大阪府・市は政府が9月に最低宿泊利用日数を「2泊3日以上」に緩和したのを受け、条例改定し、17年1月から「2泊3日以上」を実施する。
ただ、条例施行前からの民泊が今も“ヤミ民泊”として残って営業しているとみられ、府・市とも「2泊3日以上」移行の効果は薄いと見ている。
【福岡市】実験局の開設手続き短縮
福岡市の特区の取り組みの一つが「特定実験試験局制度に関する特例」。無線技術を使った開発で、実証や実演のための実験局を開設する手続き期間が短くなる。スカイディスク、スポーツセンシング、日本コムクエスト・ベンチャーズ、ロジカルプロダクトの市内IT関連4社が活用している。
福岡市が同特例に取り組む背景には、市内にIT関連企業が集積し、規制緩和の要望が寄せられていたことがある。市は創業や第2創業の支援として技術実証がしやすい環境づくりに取り組んでおり、特区はその一環の位置付け。開発への助成や連携の推進などさまざまな企業支援を同時に展開している。
特区がもたらすのは規制緩和の直接の効果だけではない。特区の事業として周知されることや市が関連することで事業への信頼感が高まることもある。ロジカルプロダクトの辻卓則社長は「制度を活用したことで会社のPRにもなっている。さらに制度が使いやすくなるとありがたい」と話す。
日刊工業新聞2016年12月29日「深層断面」