トヨタ「脱・三河の鍛冶屋」 つながるクルマを収益源に
後付けの通信機を発売
日産も通信機の搭載を拡大する考え。後付けできる車載通信機を日本とインドで17年に発売する。新車販売時にオプションとして選べるようにするだけでなく、既存車にも付けられる。トヨタと同様、車両情報をリアルタイムで管理して修理の時期を予測。補修部品のサプライチェーンで共有して、修理サービスを円滑にする。対象国を順次広げ「将来は世界の日産車の保有台数の30%に搭載する」(ケント・オハラ常務執行役員)といい、つながる車でサービスをきめ細かくし顧客の囲い込みにつなげる。電気自動車(EV)「リーフ」にはすでに同様の通信機を搭載しており、電池を監視するなどの機能があって先行しているが、他の車両にも拡大する。
日産もトヨタと同様プラットフォームの構築を進める。仏ルノーと組んで、両社共通の情報プラットフォームを開発中だ。ルノー・日産連合のオギ・レドジクSVPは「第三者にサービスを開発してもらう際にブランドごとにシステムが異なると手間になるからそれを避ける」と話す。
日産の新興国専用ブランド「ダットサン」や高級車ブランド「インフィニティ」を含め日産とルノーの全車種に展開するサービスの土台とする。仏ソフトウエア会社を買収してサービスの開発人材を拡充したが「それでもすべて自前ではできない」(同)として今後も外部との連携を模索する。
「車メーカーはこれまで馬力や室内空間など車そのものに焦点を当ててきたが、最近はサービス指向になっている」(レドジクSVP)。サービスの拡充には車のつながる化が避けられない。ただ車がつながればサイバー攻撃にさらされるリスクは増大する。車のつながる化には万全なセキュリティー対策が大前提となる。
専門家の見方
IHSマークイット 主席エキスパート 棚町悟郎氏−海外事業者との連携カギ
つながる車の世界販売に占める割合は15年は3割程度だったが、22年にはほぼすべてとなる。車の概念が変わり、つながって当然の時代が来る。消費者のニーズに対応するだけでなく、完全自動運転車を安全で快適に走らせるために自動車メーカーにとってつながる車の重要性は増す。
つながる車を自動車メーカーの新たな収益源とするには課金がカギになる。例えば、車載アプリや車載電子機器のソフト・ファームウエアの更新時の課金が挙げられる。米テスラ・モーターズが先行しているOTA(無線による遠隔ソフト更新)はリコール費用削減にもつながる。
日本車が欧米系に比べ、つながる車の取り組みが遅れているのは、自動車の安全性の評価や自動運転に関する法規制、ガイドライン整備の遅れが要因とみられる。日本車の課題は、どのように海外の通信事業者や仮想移動体サービス事業者と連携できるかだ。
(文=編集委員・池田勝敏、名古屋・杉本要)