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韓国に「おにぎりブーム」を巻き起こしたコンビニ経営の達人

<情報工場 「読学」のススメ#21>『おにぎりの本多さん』(本多利範 著)

最強のオリジナルおにぎりをつくる原動力は「素直さ」


 本多さんは本書で自らのキャリアを振り返り、流通業に携わる人に求められるのは「素直さ」であると結論づけている。コンビニは「変化対応」が肝であり、100%お客様の要望に従って店を変化させていかなければならない、とも言う。社会環境の変化や、顧客の嗜好のその時々の動きを敏感に感じとり柔軟に対応するのが重要ということだろう。

 おそらく本多さんの言う「素直さ」は、言われたことをそのまま実行したり、反論せずに「ああ、そうですか」と引き下がることではない。実際、コリアセブンでのおにぎりの開発における本多さんの行動は、そうではなかった。現状を素直に受け取った上で、それに対して何ができるかを考えられる資質を指すのだろう。

 もし本多さんにそういった素直さがなかったとしたら、日本のおにぎりをそのまま韓国で販売するか、おにぎりを主力にすること自体を諦めていただろう。日韓折衷のオリジナルおにぎり(現地では三角おにぎりを意味するサムカク・チュモック・キムパプと呼ばれている)は、コンビニ業界の発展に貢献してきた本多さんの「素直さ」「柔軟さ」の賜物なのだ。

(文=情報工場「SERENDIP」編集部)

『おにぎりの本多さん』
本多 利範 著 プレジデント社
328p 1,500円(税別)
ニュースイッチオリジナル
冨岡 桂子
冨岡 桂子 Tomioka Keiko 情報工場
本多さんの「素直さ」「柔軟さ」は、海外に進出する時以外にも有効そうだ。何か売ろうと思うときには、「どんな年代、層、グループに売れるのか」という当たりそうなターゲットが頭にまず浮かんでしまいそうだが、市場がシュリンクしている中では、逆に「この層には受けない」「今まで売れなかった」などのネガティブな理由を、本多さんのように「素直さ」と「柔軟性」を持って違う角度から見直してみる、というのは有効な手かもしれない。

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