竹富島・熊本にみる「日本郵政」ユニバーサルサービスの原点

上場から1年、どうする薄利の郵便事業

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竹富郵便局の外観。赤瓦の屋根に乗ったシーサーと丸ポストが迎える

地震直後、郵便局に明かり


 熊本地震から半年が過ぎた。「九州地方では防災士の認定を受けている郵便局長さんが多い。益城、南阿蘇の部会長さんが中心になって何が足りないかを情報収集し、我々がトイレットペーパーや携帯バッテリーなどを被災地に送った」。熊本地震の災害対策に当たった日本郵便・九州支社の新納賢悟総務・人事部専門役はあの日をこう振り返る。

 4月14日21時26分、熊本県益城町を震度7の巨大地震が襲った。2日後の16日未明には同レベルの本震が起きた。その後も余震が続き、益城町役場に近い長さ約3キロメートルの帯状地区を中心に家屋の倒壊や道路の液状化、崖崩れが相次ぎ犠牲者や多大な損害を出した。

 熊本市内の熊本城近くの日本郵便九州支社も大きな揺れに襲われた。九州支社の長谷川篤支社長は東京の日本郵政本社および日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険と協議し、16日(土)、17日(日)の週末、被害が少なかった益城郵便局など益城町の郵便局5カ所の営業開始を指示した。

 「ATMもストップしていたため、通帳や印鑑をなくした人でも本人確認ができれば払い戻した」(内田伸一益城郵便局長)。益城郵便局は翌週の土日も窓口を開き、被災者への貯金の払い戻しを実施。ゆうちょ銀ATMの取扱時間の延長も行った。

 同局には全国から水や生活物資などの支援物資が集まった。配達員は道路のハザードマップや記憶を頼りに、小学校など町内の避難所や仮設住宅に郵便物や「ゆうパック」を配達した。

 日本郵便は多くの人が避難する益城町総合運動公園に東京から車両型郵便局を走らせ、25日から自衛隊車両と臨時浴場の横に郵便局窓口・ATMサービスを開始した。

(日本郵便は移動郵便局を避難所に設置、ATMも開放した=益城町総合体育館)

九州金融連携へ


 余震が続く5月22日、全国郵便局長会(全特)福岡総会が「熊本地震の復旧・復興」をサブテーマに福岡市で開かれた。この全特総会で退任した大沢誠前会長(現・日本郵便専務執行役員)は、「会員1万9000人の局長は阪神・淡路大震災を契機に約1万人が防災士の資格を取得し活動している」と胸を張った。

 地震、台風、そして阿蘇山噴火。九州地方は相次ぐ災害に襲われた。6月の日本郵便取締役会で社長に就任した横山邦男氏は7月12日、豪雨の中益城郵便局を訪れ、「郵便局は社会的責任を果たしてほしい」と職員を激励した。

 ゆうちょ銀行の預入限度額引き上げに反対していた大手銀や地銀関係者も水面下でゆうちょ銀との連携を模索している。その第1弾がゆうちょ銀の「九州広域復興支援投資事業有限責任組合」への出資だ。

 熊本地震復興のために設立されたこのファンドには、熊本銀行や大分銀行、福岡銀行、宮崎銀行、鹿児島銀行など地域金融機関が多数参画する。九州地方が地銀連携、地銀政変の引き金を引くか。関係者は息を詰めて見守っている。

日刊工業新聞2016年11月17日/24日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

郵便事業への危機感は郵政グループ内で強い。売り上げが3兆円なら経費もほぼ同じという薄利。過去5年間の純利益の平均は日本郵便が300億円程度にとどまり、銀行や生命保険との差は大きい。郵便物は年2ー3%のペースで減少、構造改革は避けて通れない。三井住友銀行出身の横山社長がどこまで踏み込んだ手を打つかも注目されている。当然、残すべき郵便局は多くある中で、利益を安定的に生み出す体質を早く作らないといけない。

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