ベトナムの工場は一本立ちできるか。現調率でタイとまだ大きな開き
裾野産業じわり成長も、政府の支援薄く
専門家はこう見る
早稲田大学総合研究機構名誉教授・小林英夫氏
「バイクの裾野を車に生かせ」
ASEAN域内で完成車の関税がゼロになる18年に向け、本来ならベトナムは自動車の裾野産業を育てるべきだが、今となっては間に合わない。裾野産業に厚みがあるタイからの輸入車に負けてしまうだろう。
とはいえ、人口が9000万人と一定のボリュームがあり、所得向上で将来は有望な市場になりえる。中長期の視点で裾野産業を育成すべきだ。
すでにベトナム人の足となっているバイクは現地調達比率が高く輸出産業に育っている。まずはバイクの裾野産業を自動車にも対応できるよう技術力を高めていくべきだろう。
中小企業基盤整備機構理事(元ジェトロ・ホーチミン事務所長)・安栖宏隆氏
「金融面で日本の事例参考に」
ここにきて日本企業と取引できるベトナム企業は100社単位に育った印象だが、1000社単位にはなっていない。社会主義のベトナムは資本主義国と比べ、民間企業を育てるという意識が薄い点が課題だ。
しかし、15年2月に中小企業支援法を策定すると決定。日本にも法案策定の協力を依頼するなど、新たな動きはある。現状50万―60万社のベトナム企業のうち、3割しか銀行にアクセスできず、残りは身内から資金を集めている。規模拡大に向けた設備投資ができないのが実態だ。日本の中小企業金融の歴史を参考に現地政府へアドバイスしていきたい。
日刊工業新聞2016年11月24日