牛乳を耳に入れる体験ができます―。「ミミトンネル」は、ＶＲ（仮想現実）で耳から牛乳やジェリービーンズ、虫などを入れた感覚を再現する装置だ。

　明治大学の福地健太郎准教授、橋本直准教授らは頭の中を模したパイプにいろいろなモノを入れ、音や振動を収録した。ヘッドホンの左右の音量比で左右への移動を表現する。耳に入れるまでは、人が音を認知する状況と同じように録音するバイノーラルによる再生、体内では音量比が異物感の再現に良いと発見した。

　福地准教授は「痛覚のない脳が痛いと錯覚する頭痛と似ているかもしれない」と説明する。異物感は薬物中毒の幻聴やせん妄状態にも通じる。頭の中の異物表現を突き詰めると、頭痛や幻の正体も分かるかもしれない。

記者ファシリテーターの見方

　ミミトンネルは学生さんが主体となって開発されました。まず作って試して、現象を確かめてから科学すると、研究が高速に回ります。創造性への挑戦とも言えると思います。
（日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之）