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「JICA×企業」途上国で人材育成の新しい形を探る

ベトナムにみる異文化対応能力の磨き方

インタビュー JICA青年海外協力隊事務局長・小川登志夫氏


 国際協力機構(JICA)は2012年、企業と連携してグローバル人材の育成に貢献しようと、民間連携ボランティア制度を始めた。企業の社員を青年海外協力隊やシニア海外ボランティアとして途上国へ派遣する同制度の利用状況や今後の展望を、JICA青年海外協力隊の小川登志夫事務局長に聞いた。


 ―なぜ企業の社員を対象にしたボランティア制度を設けているのですか。
 「元々、現職のまま参加するボランティア制度もあったが、企業にとってはどこに派遣されるのか分からず利用しづらいとの声があった。日本の国を挙げて企業の海外展開を後押しする中、当機構としても企業が将来を見据え行きたい国を選べる制度が必要と判断し、創設した」

 ―利用状況は。
 「15年度が38人で16年度が46人。17年度は50人を目指したい。ベトナムやタイなど企業の進出が盛んなアジアへ派遣を望む企業が多い。中には、より困難な環境こそ社員は成長できると見てアフリカを希望する企業もある。だが、まだ少数にとどまる。アフリカは将来の市場として有力視されており、こちらから情報発信に努め、企業の関心を高めていきたい」

 ―途上国側は企業に何を望んでいますか。
 「低所得国から中進国へ移行する国が増える中、観光開発や経営管理といった新しい分野で支援を求める国が増えてきた。日本式のカイゼンや整理・整頓など5Sにも関心が高い。とはいえ、以前からある農業の機械化や技術指導にも根強い要望がある。だが企業側の関心が薄く、希望者が少ない。企業の農業参入の動きがある中、今後は希望者が増えることを期待したい」

 ―今後の課題は。
 「当機構とボランティアの派遣で合意書を結んだ企業は103社あるが、実際に社員を派遣した企業は半数にとどまる。予定していた社員が急に体調不良になるなど理由はさまざまだが、企業にとってまだ使い勝手がよくない面があるのも事実。個別面談で企業が抱える悩みを聞き、より利用しやすい制度に改善していきたい」
(聞き手=大城麻木乃)
2016/11/9/10/15
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
JICAは最近、地域の金融機関と相次ぎ連携している。ローカル×グローバルの文脈の中で地方の優良企業の海外進出の支援もより積極的に。

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