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女性活躍に地域格差。「1割程度しか管理職を希望していない」現実

地方の上場企業や中堅企業には人材層薄く。ロールモデルが必要に

政府も後押し、刺激し続けていくことが大切


 政府や自治体も「地域発」の取り組みを後押しする。経済団体も巻き込んだ地域ぐるみの取り組みの先駆けは、九州経済界が立ち上げた女性管理職ネットワーク「WE―Net福岡」が知られるが、同様の取り組みは全国に広がる。

 経済産業省は、女性の活躍推進に積極的な企業を掘り起こすなかで、地域の女性リーダー同士の交流促進を重視する。これまで各地で開催してきたセミナーやイベントでは、経営トップにその意義を訴えかけてきたが、今後はこうした機会を女性管理職やその予備軍の交流の場、また地域のロールモデル発信の場として活用したい考えだ。

 7月に名古屋市で開催したセミナーには、デンソーなどモノづくり企業の女性管理職が登場。女性活躍について、女性の意識が追いついていない現状をどう打開するかについて議論が交わされた。「ロールモデルを意識的に発信していくなど、刺激し続けていくことが大切」「上司は管理職候補をどう育てればよいのか」という声が上がったという。

内永ゆか子氏に聞く「目覚めさせるが第一歩」




 都心の企業で活躍する女性と地方企業の女性に能力差はない。しかし、キャリアアップに対する意識の差は広がっていると感じる。都心部の企業を中心に社外ネットワークづくりが進み、女性同士が企業の枠を超えた交流を重ねてきた。

 その結果、ようやく「昇進することはしんどいことばかりではないらしい」「それなりに自身の人生を豊かにするものらしい」と認識される時代になった。自分に力があるかは分からないが、周りを見る限り「やれそうだ」との機運は醸成されつつある。10年かかってここまで来た。

 他方、地方ではロールモデルの少なさはもとより、こうしたそういうメッセージを発信したり議論する機会に乏しい。親近感がないからイメージもわかない。活躍する人を目の当たりにしても「あの人は特別だから」「うちの会社は違うから」と、今の自分を肯定してしまう。

 企業単独の取り組みでは限界がある。だからこそ企業横断の継続的なネットワーク形成を意図的に進めていく必要があり、交流の場の創出には地域の経済団体の積極的な参画を期待する。管理職のなり手がいないと嘆く企業は、まずは社外ネットワークに社員を参加させ「目覚めさせる」ことが一歩となる。(談)
(文=姫路支局長・丸山美和、神崎明子)
【略歴】
内永ゆか子う(ちなが・ゆかこ)71年(昭46)東大理卒、同年日本IBM入社。95年取締役、04年専務執行役員。08年ベルリッツコーポレーション会長兼社長兼CEO。13年名誉会長を退任。07年からJ―Win理事長。香川県出身、70歳。
日刊工業新聞2016年11月15日
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
ロールモデルの重要性が指摘されますが、確かにいない。仕事に対する姿勢や生き方。理想を体現する存在を私自身も探しています。

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