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日本の原発輸出は再び動き出すのか

日本・インド「原子力協定」締結。過去の新興国での失注を振り返る
日本の原発輸出は再び動き出すのか

モディ・インド首相を出迎える安倍総理(首相官邸のホームページより)


水や鉄道というインフラ提供の“アメ”も必要


 「実績と安全だけでは戦えない」―。経済産業省幹部はUAE、ベトナムでの連敗を受け、ため息混じりにこう語る。
 過熱する原発受注競争を見据え、経産省も原発の運転実績や安全性だけでなく、プラスアルファの重要性は強く認識している。原発の単品輸出だけでなく、外交面での後押しや水や鉄道といったほかのインフラ提供という“アメ”も必要だ。

 相手国が求めるものを何でも提供できる国へ―。政府が目指す「問題解決型国家」において、原発は極めて有効なカードになるはずだった。

 国には自信があった。「原発は安全性の確保が大前提。コストより実績が問われるはずだ」(経産省幹部)。日本は間断なく原子力政策を推進してきた。原子力先進国であることは間違いない。プレーヤーは高い技術を誇るプラントメーカーと安全なオペレーションを積み重ねてきた電力会社という組み合わせ。このコンビで「外交下手というハンディを十分克服できる」(関係者)と言われてきた。

 「実績と安全」という切り札で差別化を狙った日本勢だが、今回のUAEやベトナムの結果を見る限り、供給サイドの思いと需要サイドの原発に求めるものが乖離(かいり)していたことがうかがえる。

国全体としてどうリスク回避できるか


 UAEではコストと長期間の保証が決め手になった。韓国勢は低価格の建設費用に加え、60年間のオペレーションを約束するという法外な条件を提示、日本を含めたライバルをけ散らした。

 「韓国勢が低価格戦略を武器に今後の世界市場を席巻する」と指摘されるが、「UAE案件に韓国は国のメンツをかけた。だがどう考えてもリスクが大きすぎ、ビジネスとして成り立たないはず」(資源エネルギー庁幹部)。今後の原発受注がすべてコスト競争だけで勝負が決する可能性は低い。

 だが、日本勢としてもコストやオペレーションのあり方の再考を迫られるのは確か。「かつて新興国のインフラ整備では、モノをつくり出してあげれば終わりだったが、今は『モノを動かしてくれ』と要請される」(経産省幹部)。原発で例えれば、建設だけでなくオペレーションも―。相手先のニーズは変化している。

 国は「電力会社が海外での原発事業に乗り出せるようあらゆる環境の整備を進めたい」(エネ庁幹部)として、実績と安全だけではなく、さらなる付加価値の創造を目指すが、電力各社は慎重な姿勢を崩さない。

 国家プロジェクトに位置づけるならば民間任せは許されない。国全体としてどうリスク回避できるか、そして供給側と需要側のギャップをどう埋めるか。オールジャパンの体制再構築に向けた課題は多い。
※肩書き、内容は当時のもの

2010年2月12日

永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
かねてから両国の経済界は原子力協定を前提として日本の原発技術をインドに供給することを求めていたのでこのニュースを歓迎したい。インドはムンバイとその周辺部を除いて電力供給は極めて不安定である。加えて、今後、中国に次いで経済発展が見込まれるインドでは、それに見合う安定した電力インフラの拡張が不可欠である。東電の痛ましい事故を経験しているからこそ、その学習効果を踏まえた日本の安全な原発技術を供給すべきである。それは、インドのネルギーインフラに資するとともに、リスク管理を含むソフトとハードの日本の原発技術を深化させ、継承者を育て保持することに資するからである。

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