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スマホの長時間使用が「うつ」の原因に!?“首こり”のリスクとは

<情報工場 「読学」のススメ#18>『「スマホ首」が自律神経を壊す』(松井 孝嘉 著)

「首こり」が副交感神経の指令の流れを阻害する


 負担をかけられた首は筋肉疲労から筋肉変性を起こし、しまいには骨のように硬くなる。それが「首こり病」だ。それだけでも厄介だが、もっと恐ろしいのは、この症状がさまざまな疾病につながる可能性だ。頭痛、めまい、吐き気、胃痛などの症状が生じ、それが悪化。松井医師はさらに深刻なものとして、「うつ」への発展を警告している。首こりが原因で起こる「うつ」は、重症化すると自殺に至る危険性も高いという。

 こうしたさまざまな症状を生むメカニズムに深く関わるのが、書名にもある「自律神経」だ。自律神経は、われわれ自身が意識しなくとも自動的に働き、内臓の動きや、消化や呼吸、発汗、体温、代謝活動などをコントロールする。「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、それぞれ対照的な働きをする。交感神経は人の心を興奮状態・緊張状態にもっていく。そうした高ぶった交感神経を抑えるのが副交感神経だ。

 この副交感神経がうまく働かなくなったらどうなるか。いわばブレーキの効かない車のように、コントロール不能になる。そうすると体や心にさまざまな不調が生じてくる。松井医師は、首こり病による、前述したようなさまざまな症状は、副交感神経が働かなくなったことが原因だという。すなわち、副交感神経の指令が、こり固まった首の筋肉に妨害されて各器官にいきわたらなくなるということだ。

 不調のメカニズムがわかれば話は簡単だ。症状を軽くするには、首をうまくほぐして筋肉をやわらげればいい。そして、首がこるような姿勢を長時間続けることを避ければ予防になる。ただし、首はデリケートな部位なので、強くもんだりポキポキ鳴らすことは避けるべきだそうだ。

「無理のしきい値」自分なりの基準を


 ある程度健康な人の心身は、思う以上に丈夫にできていると思う。多少無理をしようが、その後に必要な休息をとれば回復する。なかなか回復しない場合は、大きく分けて二つのケースが考えられる。一つは、極端に無理をしすぎて限界を超えたとき。もう一つは、要となる箇所(急所)を痛めた場合だ。後者であれば、ふだんなら平気なはずの負荷でも不調につながってしまう。本書の論に従えば、その「急所」とは「首」だ。

 われわれは、普段から自分がどのくらいまで無理できるのか、「無理のしきい値」とでもいうべき自分なりの基準を、しっかりと把握しておくべきだろう。そのしきい値に至らないのに不調や何らかの症状が発生したら、「首こり」を疑ってみるといい。

 いちばん良いのは、もちろん「首こり」にならないよう普段から気をつけることだ。何時間も前斜姿勢でスマホを操作するような「極端さ」を避ける。「極端さ」から個性やユニークなアイデアが生まれる、と主張する人もいるが、スマホの操作のような日常動作にまで「極端さ」を求める必要はない。むしろ日常は可能なかぎりニュートラルなコンディションを保った方が、いざという時の「極端さ」が生きてくる。

 あまり神経質になりすぎるのは逆効果だが、本書を参考に、気がついた時に「首」のケアをする習慣をつけてみてはいかがだろうか。
(文=情報工場「SERENDIP」編集部)

『「スマホ首」が自律神経を壊す』
松井 孝嘉 著
祥伝社(祥伝社新書)
184p 780円(税別)
ニュースイッチオリジナル
冨岡 桂子
冨岡 桂子 Tomioka Keiko 情報工場
この書評を読みながら、思わず姿勢を正してしまいました。スマホのブルーライトが眼精疲労を起こすほか、寝る前にもスマホを見ているとブルーライトのせいで浅い眠りになるとか、最近、スマホをめぐる健康被害(?)の話は尽きません。イノベーションによって、そろそろ「健康に良いスマホ」あるいは「健康を害さないスマホ」がでてきても良いのでは、と思います。買う人はきっと多いのではないでしょうか。

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