物材機構が町工場と究極の「滑り」対決!NHK『超絶 凄ワザ!』今日放送

物質・材料研究機構は国の機関として初めて『超絶 凄ワザ!』に参戦

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スタジオでの対決を見守る司会の千原ジュニアさんたち

ビッグデータをどのように活用するか


 構造材料研究拠点は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)としてMIの研究が進む。課題は信頼性評価のコストだ。

 渡邊誠SIP―MIラボ長は「新材料を開発しても信頼性評価に開発費の何倍もの費用と期間がかかる。データやシミュレーションで実験を半分にできれば大きい。MIを信頼性の評価基準に発展させたい」と意気込む。

 これまで信頼性研究は地味で資金を集めにくかった。国際認証などと連携して材料の海外展開戦略を描く必要がある。そこでグローバル展開で先行する腐食研究が注目されている。気候によってサビの発生メカニズムや腐食の速度は変わる。

 物材機構では東南アジアや中国、インドの研究者と連携し、現地で暴露試験を進めている。 長井寿(ことぶ)特命研究員(前拠点長)は「同じ国でも都市と地方では材料に求められる性能が変わる。データと認証を合わせた開発戦略を産学官連携で練る」という。メーカーや認証機関を巡り、連携体制を構築している。

(物材機構のクリープ試験棟。高温下の耐熱鋼を引っ張り続ける=物材機構提供)

 機能性材料は情報統合型物質・材料研究拠点がMIの中核になった。コンソーシアムには旭硝子、旭化成など39社が参画。電池や磁石、伝熱材料などの開発基盤となるデータベース(DB)を整備中だ。17年4月には27万4000種の結晶構造と10万種の特性データが活用できるようになる。

 現在、物材機構や大学の研究者が各分野の事例を積み上げている段階だ。寺倉清之拠点長は「35年前に計算科学が材料開発に使われ始めた時とよく似ている」と説明する。共通理解は進んだものの、みな手探り状態だ。

 そこで企業向けに統計数理研究所と連携して演習講座を開いている。毎回満席になる盛況ぶりだ。材料の技術者がベイズ推定やスパース分析、機械学習などの数学や情報技術と格闘している。

 実際、参加者の理解度には開きがあり、人を選ぶようだ。新分野への挑戦は生やさしくない。だがこの挑戦が新しい材料開発の道を開く。

橋本理事長に聞く「鉄鋼・化学業界のハブ目指す」


 物材機構は企業の基礎研究機能を誘致し、連携して研究するオープンイノベーション拠点を立ち上げる。物材機構が企業と大学をつなぐ。そこで学術界と産業界向けに別々に開いてきた技術交流会を「NIMSWEEK」として統合。産学の研究者が一堂に集い、議論する場とした。橋本和仁理事長に展望を聞いた。


 ―次の半世紀に向けて、どんな研究基盤を作りますか。
 「二つある。一つは産産学学の連携の場を作りたい。トヨタ自動車の内山田竹志会長がSIPを高く評価しているのは企業の連携が実現した点だ。普段競争している企業が協調して基盤技術を開発する。このハブとなる機関がなかった。物材機構は鉄鋼と化学業界のハブを目指す。本来すべての産業にハブ機能があるべきだ。我々がその先鞭(せんべん)をつけたい」

 「二つ目はサイバー(情報)とフィジカル(モノ)の融合だ。情報科学を取り入れた材料開発を徹底的に強化する。耐熱合金では情報科学を使って性能予測を飛躍させた。市販の予測プログラムは到底及ばない。40年のクリープ試験など体系的な高品質データがその基盤となっている」

 ―データを核に企業連携は進みますか。
 「信頼できるデータをいかに集めるかが勝負だ。高品質データはAIでビッグデータを解析する際の指針になる。課題は企業のデータだ。各企業には事業化を諦めた材料のデータ共有を提案している。連携企業は我々のデータを活用でき、耐熱合金のような成功例もある。オールジャパンで連携できるか正念場だ」

 ―異分野融合のノウハウは。
 「物材機構は構造材料中心の金材技研と機能性材料の無機材研が01年に統合、発足した。構造材はインフラ、機能材は電子機器など業界も文化も違う。蛍光体は構造材と機能材の知見が融合し、長寿命化に成功した。融合の素地は十分にある」

 ―データを使った材料の標準化や認証事業への展開は。
 「既に経産省と議論を始めている。材料の国際競争力を高めるには評価法や標準化は重要だ。ただ標準化と認証を本格的に実施するのは研究機関には荷が重い。産業界と役割分担を協議していく」
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2016年10月19日



COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

『超絶 凄ワザ!』に登場する企業は日刊工業新聞で取り上げている企業や機関がとても多い。ちょうど先日、今年で60周年を迎えた物材機構の特集記事を掲載したところ。去年、「超絶 凄(すご)ワザ!」の取材に番組制作をしている名古屋まで行ってきて、番組づくりのこだわりに感心した。今後も「凄(すご)ワザ!」とはいろいろ協力できればと思っている。

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