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車載イメージング市場、自動運転での勝者は?

ソニーはトップの地位を死守できるか。レーザースキャナーも実用化へ
車載イメージング市場、自動運転での勝者は?

ソニーが昨年に子会社化したベルギーの画像センサー会社、ソフトキネティックシステムズ(同社ウェブページより)


デルファイとモービルアイが提携


 自動車部品大手の英デルファイ・オートモーティブとビジョンシステムなどを手がけるイスラエルのモービルアイが23日、自動車メーカー向けに自動運転モジュールの共同開発に乗り出すと発表した。自動車メーカーがこのモジュールを車両に組み込めば自動運転車が実現できるターンキー型のシステムで、コスト効果も高いとしている。2017年1月にラスベガスで開催されるCESにデモ出展し、2019年に量産に入る計画だ。

 「CSLP(セントラル・センシング・ローカリゼーション・アンド・プラニング)」と名付けた。自動車・航空機の関連技術者団体である米SAEインターナショナルの定める6段階の自動運転レベルのうち、加速・操舵・ブレーキすべてをシステムが行い高度な自動運転を実現する上から2番目の「レベル4」と、完全自動運転の「同5」に対応させるという。

 共同開発に当たって、モービルアイ側からは、画像処理を行う「EyeQ4/5」チップやリアルタイムマッピングシステム、人工知能(AI)の強化学習システムを提供し、それにデルファイのレーダー、ライダー(LiDAR=光レーザーレーダー)、カメラといったビジョンセンサー類、コントローラーを組み合わせる。さらに、自動運転ソフトウエアには、デルファイが2015年8月に買収したカーネギーメロン大学発のスタートアップ、オットマティカ(Ottomatika)のアルゴリズムを採用する。

 実はテスラモーターズの半自動運転機能「オートパイロット」には、モービルアイの現行のビジョンシステム「EyeQ3」が搭載されている。だが、5月の「モデルS」による死亡事故を機に両社の関係が悪化し、モービルアイはテスラとの提携を解消、「EyeQ4」以降のモデルを供給しないことになっている。一方でモービルアイは、独BMWおよび米インテルと3社で、2021年までに完全自動運転車を共同開発することで合意するなど、複数の完成車メーカーと相次いで提携関係を結んでいる。

ニュースイッチ2016年08月24日



「レーザースキャナー」いよいよ実用化へ



(仏ヴァレオのレーザースキャナー「SCALA」)

 自動車部品や電子デバイス各社が、完全自動運転や高度な運転支援向けの高精度センサー「レーザースキャナー」を1―2年をめどに相次ぎ実用化する。数センチメートル単位の精度で数十メートル先の物体を検知する。従来の数百万円から、市販車に搭載可能な数万円以下の価格に下がる見通しがついてきた。新たな部品市場をどこが握るか、新興企業にとってもチャンスが大きい。

 レーザースキャナーはライダーとも呼ばれ、米グーグルカーのルーフ上に載る回転警告灯のようなものが有名だ。近赤外レーザーを照射し、物体にぶつかった時の散乱光から距離を測る。非常に検知精度が高いが、数百万円の価格に加え、回転灯のままでは車の外観を損ねる問題もあった。

 自動車部品大手の仏ヴァレオはいち早く、2016年末に市販車向けの「SCALA」の量産を始める。価格は非公表だが、採用も決まっていることから、かなりのコストダウンを実現したと見られる。扁平(へんぺい)状でフロントグリルなどに設置できるデザインになった。

 パイオニアは18年以降に一般車両向けの「3D―LiDAR」を発売する。その前に16年に自社グループの地図整備用車へ導入し、17年に業務車両への販売を通じて、実用性を高める。「構造や仕組みから見直し、大幅にコストダウンできる。18年以降に1万円以下を目指したい」(同社広報)と意気込む。

 このほか米ベンチャーのクアナジーシステムズ(Quanergy)は独ダイムラーや現代自動車をパートナーに持ち、世界的に注目される企業だ。海外報道によると16年に250ドル(約3万円)でカードサイズの製品を提供する計画という。

 レーザースキャナーは、現行の運転支援システムに使われるセンサー類の代替となるだけではない。注目される理由は、車がセンサーからの情報をもとに細かな地図をつくり、その地図上を走る技術「SLAM」との関係だ。完全自動運転や高度な運転支援の実現にはSLAMの利用が有力視されており、ここで使われるセンサーにレーザースキャナーが浮上している。
 
 つまりレーザースキャナー市場の拡大は、SLAMや地図を使った自動運転での利用がどれだけ広がるか否かに懸かる。そこで各社は自動運転システムの開発との連携に力を入れ始めた。仏ヴァレオに技術提供している独イベオは、SLAM技術を持つロボットベンチャーのZMP(東京都文京区)の自動運転車の開発に協力。パイオニアは「グループ内に自動運転用地図を作成する仕組みを持っていることが強み」(広報)という。

 完全自動運転のキーデバイス市場を独占できれば、新興企業も自動車業界で影響力と高い収益を得られる。実際に車載カメラの画像処理半導体で7―8割のシェアを握るのは設立約15年のベンチャーだ。レーザースキャナーからも自動車業界の新しい主役が生まれるかもしれない。
(文=梶原洵子)

日刊工業新聞2015年09月08日

政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
ソニーの車載向け画像センサーは、自動車メーカーからの評価がずいぶんと高いようだ。自動車部品メーカーも含めてシステムとしての提案が活発になっており、現在はセンサー単品で展開するソニーも体制を整える必要があるだろう。以前はゲームで培った技術を中心に高い画像処理技術を持つ人材がいたが、構造改革の影響ですでに社内には残っていないとの指摘もある。ソニーの次の一手が注目される。

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