日立の事業資産入れ替えが再び動き出すのか!?

巨額赤字から復活、「川村改革」1826日の真実

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左から川村相談役、中西会長、東原社長

HDD事業売却「決断できる経営」示す



 日立製作所がハードディスク駆動装置(HDD)事業を売却することになった。これまで課題事業を見切れないのが、日立の悪癖だった。昨年4月に就任した中西宏明社長は「決断できる経営者」であることを示した。ただし注力する社会インフラ事業で成長してこそ、今回の決断が生きてくる。

 HDD事業は2003年に米IBMから買収したもの。7日の売却発表会見では、創業来最大のM&A(買収・合併)について「成功だったのか失敗だったのか」「採点をつけるなら何点か」との質問が投げかけられた。ただ単純に成否で評価するのは大きな意味を持たない。

 昨年11月2日。日立は米日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)の株式上場の準備を開始すると発表。しかしHDDの市況が悪化。昨年末、中西社長は「投下資本利益率を最大化することが私の最大の役目」と話し、上場以外の出口戦略も考えていることを示唆していた。

 もともと米ウエスタン・デジタル(WD)は寡占化を進める他社の買収に積極的で、一時は富士通のHDD事業などに触手を伸ばしたこともある。日立側の上場アナウンスが、WDの買収意欲を高め、結果的に好条件を引き出す呼び水になったといえる。

 巨額赤字を受け09年4月に子会社から川村隆現会長が会長兼社長として登板。上場子会社5社の完全子会社化などグループ再編を一気に断行した。しかし業績が回復したこともあり、「事業構造改革の勢いは鈍った感じがする。11年度は今後を占う勝負の年」(廣瀬和貞ムーディーズジャパンヴァイスプレジデント)という厳しい見方も出ていた。

 HDD事業は07年の古川一夫社長時代に、投資ファンドと売却交渉を進めたことがある。システムLSIやプラズマディスプレーパネル(PDP)などでも事業を完全に切り離す構想もあったが、経営トップの思い切りの無さと社内の“抵抗勢力”がそれを阻んできた。

 「今後、成長へのM&A投資では資金調達が焦点になる」(同)中で、中西社長は課題事業の売却で現金35億ドル(約2900億円)を手にするという絶妙な交渉を成立させた。過去の評価よりもこの売却結果の事実の方がはるかに重い。

 一方で中西社長は7日の会見でHDD事業を買収しさらに売却することになったことについて、「日立全体でグローバル事業を経営するいろんな経験をさせたもらった。市場に近いところで迅速に決断する力を獲得できたと思っている」とその意義を強調した。

 中西社長はHGSTの最高経営責任者(CEO)を経験、その決断力を身につけた象徴である。だからこそ、中途半端な形でなく完全売却というシナリオも実現した。中西社長は「それを広範囲なリーダーに植え付けていくのが私の重要な仕事」と話した。

 1週間前。日立は英国の高速鉄道車両置き換え計画(IEP)の受注が内定。社会インフラへ注力するという戦略からみれば、HDD事業の売却とのタイミングは強烈なメッセージになった。しかし個々の事業部門はグローバルで戦えるほど強くない。中西社長もインフラの成長戦略で実績を上げる必要がある。8日の東京株式市場で株価は一時、昨年来最高値を更新したが、「次の決断」への期待値も含まれている。
(文=明豊)

日刊工業新聞2011年3月9日



「日立=ナカニシ」を払拭できるか


 日立製作所は3日、東原敏昭社長兼最高執行責任者(COO)が4月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に就任する人事を発表した。中西宏明会長兼CEOは、代表権を持つ会長に就く。2019年3月期を最終年度とする中期経営計画が4月から始動するのに合わせ、東原氏に決定権を集中して経営効率を高める。

 14年から中西氏と東原氏の”2頭体制“を敷く中、海外営業を分担して行うなどして成果を出してきた。また、同時に海外4地域に総代表を置き、成長分野への投資権限と回収・損益責任を持たせるなど各極の指揮権を強化。各部門が自立し成長する体制の構築を進めながら、中西氏はさらなる権限移譲のタイミングを図っていた。

 また16年度から始まる中期経営計画に備え、4月1日付で大規模な機構改革を実施する。09年に導入したカンパニー制を廃止し、電力や鉄道などサービス主体の事業群を12のビジネスユニット(BU)に集約。営業やコンサルティングなど顧客対応部門をBUに集めて強化する。電力・エネルギーや産業・水など四つの市場を設定し、12のBUが市場別の体制で事業をけん引する。

 中西氏が2010年に社長に就任してからの6年間、彼のリーダーシップのもと「日立の顔」であり続けた。2年前の社長交代でも会長になりながらCEOを兼務した。海外の機関投資家からは「ナカニシに会いたい」と言われるほど、この間の日立の経営、株価には「中西プレミアム」が付いていたのも事実。

 社内でも中西氏に真っ向から意見を言える人はほとんどいなかった。今後も会長として対外交渉や取締役会での重しになるとはいえ、日立のガバナンスは大きく変わる。

 東原氏はこの2年間、社長兼COOとして「日立の顔」になるべく準備を整えてきたが、いよいよその時がきた。しかし依然として世界で勝てる強いプロダクツ、ソリューションは少なく、足元の事業環境も悪化。プレミアムが剥がれる中で、このままでは目標とする営業利益率10%は遠のくばかり。どのような手法で日立を変えていくのか。

日刊工業新聞2016年2月4日の記事に加筆






COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

 一部報道では、日立国際電気の半導体製造装置事業と日立工機の売却を親会社の日立製作所が検討しているという。実際はまだ検討段階で本格的な交渉まで踏み込んでいないと見られる。  日立国際電気は日立ハイテクとともに、川村・中西改革の時からずっと再編対象だった。特にアナリストやメディアから指摘されてきたのが半導体製造装置。ただ国際電気の通信系の事業は、本体のIT部門とのシナジーというか日立が注力する社会イノベーションに関係するので、会社丸ごとの売却はないと感じる。グループ会社の再編に踏み込むことは十分ありえるが。  東原さんがCEOになって日立はもっともっと事業構造改革を進めないといけない(収益力の向上)。個人的にはやや停滞していると感じる。日立建機のM&Aといい、社外取締役が多くなった取締役会などからかなり執行側にプレッシャーがあると思われる。

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