百貨店、閉店・業績不振が相次ぐ。流通業界で再編モード突入か
セブン&アイ、H2Oリテイと資本業務提携。新たな価値をいかに提案できるか
「三越日本橋本店」の挑戦
百貨店大手は不採算店を切る一方、大都市の旗艦店に経営資源を集中している。三越伊勢丹HDは約200億円を投じ、三越日本橋本店(東京都中央区)を20年春までに改装する。食や遊びなどの「文化」を重視する店舗と位置付け、環境デザインの設計を建築家の隈研吾氏に依頼した。
中陽次本店長は「百貨店はファッションデパートの金太郎あめになっている」と指摘し、「同じ悩みを持つ百貨店の代表として、この店を成功させたい」と意気込む。衣料品の取り扱いは縮小する方針だ。
三越伊勢丹HDや高島屋は郊外で、“百貨”を扱わず食品や化粧品に特化した小型店を出している。旗艦店を磨き上げるとともに、消費者が訪れやすい生活支援型店舗を増やし、生き残りを図る。
(三越伊勢丹HDは三越日本橋本店を改装=改装後の本館1階のイメージ)
“目利き”に頼らず同質化防ぐ
“ハコ”以上に重要なのが取り扱う商品だ。そごう・西武はバイヤー制を廃止し、新しい視点や独自性、ストーリー性がある商品の公募を5月に始めた。9月にはクラウドファンディング方式で商品を受注生産する取り組みも始めた。リスクを抑えつつ消費者のニーズに応えられるとしている。百貨店が得意としてきた“目利き”に頼らずに、同質化を防ごうとの狙いが見える。
同社は15年秋以降、店舗閉鎖や地方店舗のSC化、希望退職募集などを進めてきた。しかし収益性の悪化が続いているとして、9月30日に17年2月期の業績予想を下方修正し、店舗関連の固定資産、のれんの減損損失も計上した。
日本百貨店協会の会長を務める大西洋三越伊勢丹HD社長は、百貨店復活のカギに、ニトリのCMフレーズ「お、ねだん以上。」を挙げる。百貨店ならではの価値をいかに提案できるかに、勝負がかかっている。
(文=江上佑美子)
日刊工業新聞2016年10月3日