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科学ベンチャーの「勘違いする力」を支援する日本ならではのエコシステムとは?

<情報工場 「読学」のススメ#15>『「勘違いする力」が世界を変える。』(丸 幸弘 編)

きめ細かさなど「日本の強み」を生かしたイノベーションに可能性が


 同書に登場するベンチャー企業は、丸さん自身も技術顧問として起業に関わり、ミドリムシを使った食品や燃料を開発して有名になった「ユーグレナ」、孤独を癒す分身ロボット「Orihime」を開発する「オリィ研究所」、遺伝子解析の「ジーンクエスト」、生体信号をコントロールする筋電義手をつくる「メルティンMMI」、形状や歪みを瞬時に計測する機器を発明した「4Dセンサー」など幅広い。

 これらの企業が提供する技術や製品は、まったく新しいものとは限らない。たとえば義手にしても、センサーにしても、以前からある技術だ。しかし、メルティンMMIの筋電義手は、従来の義手では考えられないくらい、「ものをソフトにつかむ」など細かい手の動きを再現できる。4Dセンサーの計測機器は、既存のセンサーでは数十秒かかる形状チェックをほぼ「瞬時」に行うことができる。これであれば、工場のラインを止めずにリアルタイムで製品のチェックが可能になる。

 こうした、既存の技術を研ぎ澄まし、機能を極限まで向上させたり、きめ細かな改善を加えるというのは、これまでの日本企業が得意としてきたことでもある。リバネスのエコシステムが完成し、「日本の強み」を生かしたイノベーションが再び世界を驚かせる日もそう遠くないのかもしれない。

(文=情報工場「SERENDIP」編集部)

『「勘違いする力」が世界を変える。』
丸 幸弘 編
リバネス出版
256p 1,500円(税別)
ニュースイッチオリジナル
冨岡 桂子
冨岡 桂子 Tomioka Keiko 情報工場
日本ではベンチャー企業が育たない、成功しないと言われる。それは、失敗を許さない文化があるために、成功しないリスクが高い起業を職業の選択肢にしない人が多いこと、つまり起業をする人が少ないこと、そして一度失敗すると再起するのが難しいことなどが挙げられる。ただその環境のままでは日本はどんどん世界に遅れを取るだろう。何度でも挑戦できる文化を醸成していくことが必要だ。

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