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食糧からフリマアプリまで。三井物産のM&A、7つの攻め筋

前期は創業初の赤字も、優良資産の取得で利益成長に手応え
食糧からフリマアプリまで。三井物産のM&A、7つの攻め筋

北海道で生産するタマネギ、メリカリのフリマアプリと安永竜夫社長


今期の利益計画は問題なくクリアか


 ①ハイドロカーボンチェーン
  上流開発(原油・ガス)・商業化(LNG、化学品、発電)
  輸送・周辺事業(船舶、鋼管、インフラ建設など)

 ②資源(地下+地上)・素材
  金属資源の開発・生産、製品の流通・加工・再利用
  技術進歩を見据えた金属・化学素材事業の展開

 ③食糧と農業
  肥料・食糧資源、食品原料
  農業化学、食品・栄養化学

 ④インフラ
  電力・水・港湾など
  次世代型都市開発など

 ⑤モビリティ
  自動車、産業機械、船舶、航空、交通
  運送事業や他の「攻め筋」への広がり

 ⑥メディカル・ヘルスケア
  病院事業、周辺サービス事業
  医薬開発・製造・販売

 ⑦衣食住と高付加価値サービス
  衣・食(流通・データ・E コマース)
  住(不動産・金融・関連サービス)

 直近のM&Aの実績を見てみると、国内食肉製造、販売を手掛けるスターゼンの株式の取得があり、出資比率を2.5%から16.39%まで引き上げた。これは攻め筋で言うと「食料と農業」に該当しよう。国内の畜産農家は減少の一歩をたどっているものの、海外に目をやると中間層の増加により食肉の需要は増えている。三井物産としては、同社の世界的なネットワークを生かしてスターゼンの企業価値向上を狙っていくようだ。

  また、「食料と農業分野」では、日本曹達と共同で出資している「Novus社」の増資を引き受ける。同社は必須アミノ酸のであるメチオニンの世界的なメーカーである。このメチオニンという成分は、牛や豚の成長に欠かせないものであり、特に鳥に関してはこの成分量で成長促進が決まるという。

 Novus社は世界で3割のメチオニンシェアを持ち、三井物産はこの事業の将来性に大きな期待をよせているのであろう。補足として、Novusとしても10年に食料添加物の製造販売を行う企業を3社買収しているといった背景もあり、三井物産のこの分野の強化については余念がない。

 また、「衣食住と付加価値サービス」については、16年3月にスマホ向けフリマアプリで知られるメルカリの第三者割当増資の引き受け、東南アジアなどでネットを使った個人間での取引サービスを立ち上げる。

 メルカリは、国内ではフリマアプリとして最大手であり、日米合わせ3200万ダウンロードの実績を持ち、月間の流通額は100億円を超える。三井物産は同社が出資をするインドネシアやアフリカの高速通信会社で扱う端末にメルカリのアプリの導入を検討しており、情報通信分野への強化をもくろむ。

 上記の通り、三井物産の自己資本比率は30%程度で推移している。16年3月期は31%となるが、三菱商事(30.8%)、伊藤忠商事(27.3%)、住友商事(28.8%)と比較しても大きな差はない。

 17年3月期の通期見通しは最終利益で2000億円を見込んでいる。内訳としては金属資源が450億円、機械・インフラが600億円、生活産業が150億円、エネルギーが0億円、次世代・機能推進が100億円となる。16年3月期、金属資源の減損損失が一過性のものであり、効率の良い投資ができれば、提示している最終利益は問題なくクリアできるであろう。



大手6社とも今期は「非資源」業績けん引


日刊工業新聞2016年8月8日


 大手商社6社の2017年3月期連結決算業績予想は、全社が期初予想を据え置いた。16年4―6月期はおおむね順調に推移したものの、資源市況の早期回復が見込めそうにないことが主な要因。今後も非資源事業が業績をけん引する形が続きそうだが、一部で資源事業の収益力強化策が実を結ぶ動きも出ている。

 「ここ数年の取り組みの成果が出た」。三菱商事の増一行最高財務責任者(CFO)は、資源事業でのコスト改善策の効果を強調する。

 同社は全社の中で唯一、16年4―6月期に資源分野の当期増益を確保した。特に金属資源部門は、116億円の黒字(前年同期は56億円の赤字)に転換。豪州石炭事業で減価償却費の減少に加え、採掘業者との契約見直しや設備保守の期間短縮などが奏功した。

 三井物産も金属資源事業で減価償却費が減ったほか、操業費用が低減するなど「コスト削減効果が強めに出た」(松原圭吾CFO)ことで同22・0%増の216億円となった。住友商事は資源分野で当期赤字となったが、資源関連の主要事業会社で計71億円の販売数量増加とコスト削減による利益貢献があったという。

 ただ「鉄鉱石と石炭は、中国の過剰在庫が解消されないと本格回復は見込めない」(丸紅の矢部延弘CFO)など、資源分野は引き続き、厳しい環境が続く見通し。今後もコスト削減の手綱を緩めることは許されない展開が続く。

M&A Online編集部2016年09月06日
石塚辰八
石塚辰八 Ishizuka Tatsuya
商社に試練の時が訪れています。その原因は昨年から続いている資源安です。これまで商社と言えば資源ビジネスが主力のイメージでしたが、それだけに、ここのところの中国経済の減速とイランの石油増産の影響をもろに受けたかっこうです。業界のトップを走る三菱商事、三井物産がそうでした。 ただ、非資源で強い伊藤忠は逆に絶好調で、好対照を見せました。資源関連はこれからもっと荒っぽい動きになるかもしれず、いち早く収益構造を転換した商社が覇権を握ることになる、ということでしょう。

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