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MRJに空調システムを納める「UTCエアロスペース・システムズ」ってどんな会社?

今後はサプライヤー管理の重要性増す
 三菱航空機(愛知県豊山町)が開発する国産の小型ジェット旅客機「MRJ」が27、28日に2日連続で米国への飛行試験を中止した。同社は30日、中止理由について、「空調システムを監視しているセンサ信号に異常を検知したため」と発表。8月中に計画していた米国への渡航は9月中旬以降に延期される方向となった。

 問題を起こした空調システムは、航空機部品大手の米ユナイテッド・テクノロジーズ傘下のUTCエアロスペース・システムズ(ノースカロライナ州)が製造したものだ。業界関係者の間では、社名の頭文字をとってUTAS(ユータス)とも言われる会社だ。日本では必ずしも聞き慣れない会社だが、一体どんな会社か。

買収に次ぐ買収で生まれたメガサプライヤー


 2008年にMRJが事業化された当初、空調システムは、航空機制御機器最大手の米ハミルトン・サンドストランド(コネチカット州)が受注した。ハミルトンは今回問題になっている空調以外にも、MRJに電源や補助動力(APU)、燃料タンクの防爆、高揚力装置、防火の各システムを供給している。

 米国は企業の合併・買収が盛んな土壌である。ハミルトン・サンドストランドも、元々は1999年にハミルトン・スタンダードという航空機のプロペラを作っていた会社を、サンドストランド・コーポレーションという航空機の非常電源などをつくる会社が買収してできた会社だ。

 さらにこの会社は2012年、航空部品大手で脚部などを手がけるグッドリッチに買収され、グッドリッチはさらに大きな複合企業のユナイテッド・テクノロジーズ・コーポレーション(UTC)に買われた。この際、グッドリッチは「UTCエアロスペース・システムズ」(UTAS)となったわけである。

 少々複雑な過程をたどっているが、これがMRJに空調を含む制御系システムを納める会社の設立経緯だ。UTASの従業員数は世界で約4万2000人、年間売上高は約140億ドル(約1兆4000億円)に上る。

 なお、親会社のUTCグループには、ヘリコプターのシコルスキー、航空エンジンのプラット・アンド・ホイットニー(MRJのエンジンの供給)、空調設備のキヤリア(日本では東芝と組んで「東芝キヤリア」として展開)、エレベーターのオーチスなどが含まれる。まさに規模を追求するコングロマリッドである。

 UTASは旧ハミルトン時代から空調をはじめとする制御系に強く、ボーイングなどにも長年、システムを供給している。

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日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
もともと、旅客機への新規参入自体が相当に難しいものです。それでも参入できれば、航空機産業が将来の日本の有力な基幹産業になります。 MRJの米国拠点は一日に一機当たり最大3回くらい飛ばせるようですから、数週間くらいの渡米の遅れは取り戻せるはずです。米国での試験がすんなり行くかどうかが勝負です。

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