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トヨタが目指す“高い視点の経営” 副社長は「ラリーの助手席でナビゲートする人」

意志ある踊り場から実践するフェーズに向け、本当にトヨタのことを考える役員増やす
トヨタが目指す“高い視点の経営” 副社長は「ラリーの助手席でナビゲートする人」

8日の決算発表で(豊田社長)

 トヨタ自動車は「意志ある踊り場から実践するフェーズ」(豊田章男社長)に向け、役員のマネジメント体制を大きく変更した。従来、副社長はビジネスユニット(BU)や機能の執行責任者だったが、4月からは経営の意思決定と執行監督を行う役割に変更した。これまで副社長は各部門の執行役トップで、会議では会長や社長に報告する立場だった。報告を受け、会社全体を見ながら質問や指摘をするのは主に内山田竹志会長と豊田章男社長だった。
 
 新体制では副社長がより高い視点から会社全体を考え意思決定する。「コ・ドラ(コ・ドライバー)になってもらいたいという意味だ」。首脳は、こう思いを語る。コ・ドラとはラリーで助手席に座りドライバーをナビゲートする役。目先のコーナーではなく、その先の道のことを考えドライバーを誘導する。ドライバーの豊田社長を、コ・ドラの各副社長がナビゲートする体制を描く。

 一方、副社長が担っていた業務の執行は専務以下で完結する。例えば3月まで伊原保守副社長(63)がトップを務めていた新興国担当のBU「第2トヨタ」。4月からは53歳の小寺信也常務役員がトップについた。常務役員から副社長までへの決済のステップを省き、意思決定を迅速化する。

 トヨタの役員は、これまで年功序列的だった。そのため昇格に関連する年次はほぼ経験値的にわかり「その年次だけやる気になる」(首脳)風潮があった。今回の昇格人事は年次はバラバラ。伊原氏から小寺氏のような大幅な若返りの人事も交えることで「すべての役員に緊張感を持たせ、やる気にさせる」(同)。

 自分の出世ではなく「本当にトヨタのことを考える」(同)当事者意識を持った役員を増やし、その各役員が現場に近いところで意思決定する―。“大企業”トヨタが何より課題とする“スピード”を上げ、競合に打ち勝てる準備は整った。
 
日刊工業新聞2015年05月11日 深層断面から一部抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
章男社長は8日の会見で「一番変わらなければならないのはトヨタ本体。非常に危機感を持っている。現場に近い人に権限を渡し、現場に近い人が判断できる体制を目指した」と語っている。逆に副社長をどうモチベートさせるかが興味深い。

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