リオ五輪「4Kテレビ」の販売押し上げ。東京に向け8Kへ布石
映像のスポーツインフラは家、スタジアム、街へと広がるか
スタジアムでのコトづくり、さらには街づくりへ
スタジアムやイベント会場では、大型映像がスポーツ観戦を彩る。ここで重要なのが没入感を高める映像技術だ。パナソニックは複数のプロジェクターを使い、フルハイビジョンの16倍の解像度を持つ8K映像の表示技術を開発した。三菱電機は高精細の大型ビジョンで、演出の幅を広げる。映像によるスポーツのエンターテインメント化は進化している。
パナソニックは高輝度4Kプロジェクター4台を使い、4万ルーメンの明るさで240型の8K映像を映し出す技術を実現した。6日から同技術を用い、リオデジャネイロ五輪・パラリンピックのパブリックビューイングイベントを行っている。
画素を240分の1秒の速さで上下左右に動かして密度を4倍にする「クアッドピクセルドライブ」技術で、プロジェクターを小型化したまま解像度を向上。補完画像を作りながら、画像処理能力を4倍に高める「リアルモーションプロセッサー」技術も搭載した。
パブリックビューイングは設営にかかる時間が短い上に、人の流れや周辺設備などの影響が大きい。4枚の高解像度映像の画素を合わせて1枚にする難しさもあり、自動補正する機能や外的影響を抑える機構を加えた。
8K映像の商業利用はもう少し先になりそうだが、片岡亮パナソニックAVCネットワークス社ビジュアルシステム事業部課長は「今回実現できたことが、一つの大きな自信になった」とほほ笑む。応用としては「没入感の高い8Kなら、仮想現実(VR)を複数人で楽しめるかもしれない」(片岡課長)とみる。
音を見える化
三菱電機はスタジアム向け大型映像装置「オーロラビジョン」で、発光ダイオード(LED)光源の周りを黒くして映像のコントラストを高める独自の技術を採用する。光を効率よく使って消費電力を削減。色再現技術はテレビ開発のノウハウを応用した。
鮮明な映像に加えて力を入れるのが、演出との相乗効果だ。例えばスタジアムにマイクを設置し、歓声や拍手の音量を映像で見える化するシステムなどを実現した。
大倉義弘施設環境部課長は「単に映像を映すだけでなく映像を使って何をするかが重要になっており、ビジネスチャンスが広がっている」と力を込める。
将来はスタジアムでのコトづくりを、街づくりにも発展できないかと検討中だ。例えばスタジアムとスマートシティー(次世代環境都市)を連動して制御し、スタジアムを使用していない間の電力を公共設備などで使うといった構想もある。スポーツインフラが、観客の楽しみだけでなく、人々の日常生活と結びつく日も近いかもしれない。
日刊工業新聞2016年8月2日/16日