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帰省ラッシュの高速道路、今年のお盆は30km以上の渋滞が27回?


自動搬送装置、工場内での稼働最適化


 こうした渋滞を解消するための考え方はさまざまな分野への応用が可能だ。一例として、工場内で稼働する自動搬送装置の渋滞解消にも役立っている。

 工場では導入した自動搬送装置の動きを最適化する必要がある。そこで西成教授は交通渋滞の知見から自動搬送装置同士の距離や経路などを最適化したプログラムを作り、実際の工場に適用した。

 「スムーズにモノを運べるようになり、大手企業の工場での搬送効率を数%向上させることに成功した」(同)。企業経営者は生産効率を少しでも高めるための努力を重ねており、数%の効率向上のインパクトは大きい。

生体分子、細胞内輸送効率化に一役


 医療への応用研究もある。同大学大学院医学系研究科と共同でブタの神経細胞を使い、神経細胞内での生体分子の渋滞現象を確認した。

 神経細胞中にあり細胞内輸送の“レール”となる細長い「微小管」と、小胞やミトコンドリアを運ぶたんぱく質「キネシン」に着目。微小管でキネシンが渋滞すると、栄養が送れず神経活動が止まることを明らかにした。

 この場合、車をキネシン、道路を微小管に置き換えることで渋滞の理論を適用した。研究チームは生体のガソリンとなるアデノシン三リン酸(ATP)の量を調整してキネシンの渋滞の様子を調べ、そこでキネシンの最適な交通量を割り出した。

 渋滞吸収車のように微小管でのキネシンの渋滞を解消できれば、キネシンの異常により発生するがんや神経変性疾患などの治療法の確立に結びつく可能性がある。

 さまざまな知見を得られる渋滞研究だが、その成果が産業や医療に応用されるのはこれから。現実的には帰省先や行楽地からの帰り道で渋滞に巻き込まれた場合、慌てずに一定の車間距離を保ってゆっくり進むことが先決。渋滞とともにイライラも解消できるかもしれない。
(文=冨井哲雄)
 
日刊工業新聞2016年7月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
昨日が帰省ラッシュのピークだったようですが、Uターンの混雑は14日からのようです。

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