「ESG」投資元年。目の前の勝負に勝つよりもずっと存続する企業が選ばれる!?
「環境・社会・統治」を意識して企業が情報発信に動く
【事例(1)】NEC−気候変動問題解決にICT
NECは7月6日、ESGミーティングを開いた。初開催でもあり、今回は環境に絞って機関投資家15人に説明した。エネルギー効率の改善や異常気象による被害の回避に情報通信技術(ICT)を活用し、気候変動問題の解決と事業成長を両立させる戦略を解説。提供するICTによって30年度に5000万トンのCO2排出削減に貢献する長期目標を紹介した。
出席者からは目標の根拠や事業計画との連動性、研究開発についての質問が多かったという。
開催はGPIFのPRI署名がきっかけだった。同社環境推進部の堀ノ内力部長は「情報発信をしないとリスクのある会社と思われる」と危機感を抱いた。ESG投資では情報開示がないと一方的に「何もしていない」とレッテルをはられる。逆に開示があれば将来のリスクを認識して経営していると評価される。
これまでも調査機関から質問を受けていた。回答は採点や格付けがされて投資の参考となるが、堀ノ内部長は「どのように参考にされているかわからなかった。ミーティングで投資家と直接、対話できた」と成果を話す。
(NECが初めて開いたESGミーティング)
【事例(2)】三菱マテリアル−リサイクル事業を訴求
三菱マテリアルは15年7月、投資家向けにESGミーティングを開いた。企業の社会的責任(CSR)活動への社外意見を聞く有識者との対話の場で「リサイクル事業の訴求が足りない」と指摘されたことがきっかけだった。
出席者には家電リサイクル事業を通した資源循環、セメント事業による産業廃棄物の資源化など、本業と環境課題解決の関連性を紹介した。
業績の説明はしなかったが、質問はすべてが収益に関連していた。アンケートでは「ビジネスモデルがわかった」「リサイクル事業を知る機会になった」などの感想が寄せられた。
同社CSR室の鈴木浩之副調査役は「中長期視点の評価は当社のメリットになる」と期待する。長期資金を呼び込めると、腰を据えてリサイクル技術の開発に打ち込める。
一方で、成長する姿を伝えたくても、経営計画から外れた説明はしづらい面がある。岩田卓CSR室長は「会社としてESGへの考え方を高めていく必要がある」と話す。
(三菱マテリアルの貴金属リサイクル拠点がある直島製錬所=香川県直島町)
(文=松木喬)
日刊工業新聞2016年8月4日「深層断面」