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グリーはVR事業でサプライズを起こせるか

荒木取締役インタビュー「1000億円台の売り上げを目指す」
 ゲーム事業への依存から脱却するため、ヘルスケアなど他事業に参入してきたグリー。さらなる可能性を求め、現在はVR(仮想現実感)技術を活用した事業に注力する。10月にはソニーがVR対応端末を発売するなど市場も盛り上がり始めている。VR事業を統括する荒木英士取締役に今後の方針を聞いた。

 ―VR市場に参入する理由は。
 「新しい技術を使いたいという気質は、創業時から脈々と続いている。(これまで)インターネットやスマートフォンが登場するタイミングでSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やアプリなど新しいサービスが生まれてきた。VRはスマホの次のプラットフォームになると確信しており、そのタイミングで自分たちが(新サービスを)作る」

 ―どのようにVR事業を進めますか。
 「三つのアプローチで進める。まずは主力のゲーム事業に活用する。ゲーム以外では、VRを活用する企業に投資する。このほかVR市場を広めるためのカンファレンスに取り組む。市場が広がった時に親和性があれば、ゲーム以外の分野にも参入したい」

 ―VRゲームの開発体制は。
 「技術的には3Dゲームに近い。社内で3Dのチームを作っていたので、すんなりとVRゲームを開発できている。VR市場が拡大するには、VR対応端末の普及がカギを握る。良質なVRゲームが出てくれば、端末を買うという傾向が出てくるかもしれない。現在は20―30人程度が専任で開発しているが、今後は専任人材を増やして進めていきたい」

 ―VR事業で目指す姿を教えてください。
 「この市場のマーケットリーダーになることだ。ゲームに関してはスマホだけでなく、家庭用ゲーム機向けやアミューズメント施設向けなどマルチで取り組む。当社のヘルスケアなど他事業への展開やグローバル展開も視野に入れている。新しい波を捉えて、1000億円台の売り上げを目指す」

【記者の目・他分野への活用カギに】
 ここ数年でゲーム市場を取り巻く環境は急速に変化している。最近まで勢いのあったスマホゲームアプリも緩やかに失速してきた。そうした中、VR技術がどこまで消費者をひき付けるか注目される。また、ゲームだけではビジネス的な広がりは限定的だ。グリーにとって、他分野への活用方法を見いだせるかどうかもゲーム依存から脱却する上で重要になる。
(聞き手=松沢紗枝)
日刊工業新聞2016年7月21日
中島賢一
中島賢一 Nakajima Kenichi
VRはゲームに留まらず、医療・福祉や教育、観光などの分野においても注目されている。高度な技術開発とその横展開をいち早く行うためにも横断的なプロジェクトが多数生まれることを期待したいところ。

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