東京だって地産地消!八王子パッションフルーツ、狭山みかん…ブランド化の成果着々
「環境・観光・防災にプラス」
【東京都農林水産振興財団理事長・産形(うぶかた)稔氏】
東京都農林水産振興財団の産形稔理事長に話を聞いた。
―東京都の管理団体である財団の機能について教えてください。
「農林水産業の現場に密着した振興事業を実施する事業部門の事務局を担うのが当財団だ。また、農林業から食品産業までを対象とする試験研究事業を実施する農林総合研究センターは新品種の開発と、栽培方法の改善・改良について研究を進めている」
―4年後の東京五輪・パラリンピックに向けてどんな研究をしていますか。
「夏の暑さに強い花の品種改良などに取り組んでいる。農林水産物認証取得支援事業は、まだどのレベルまでの認証なのか詳細が確定していないが、認証取得費用や継続費用について全額補助する。認証取得すれば客観的な評価が得られる。五輪大会だけでなく今後20年、30年先にもつながる。1次産業が衰退しないように将来に向けての励みになる」
―他県や大学との連携の状況は。
「昨年だけで国や他県、大学などと25件も連携している。果樹や花き類などのほか、病害虫など連携して研究する分野は多岐にわたる。品種づくりは自然相手なので地道に時間をかけて進めている」
―農産物のブランド化をどう進めますか。
「各組合や農家で作った地域ブランドを除き、当財団が開発を手がけた農産物などのブランド数は現在17ある。安全・安心で、狭い土地でもたくさん生産できるよう先端的技術で低コスト・省エネ、多品種生産可能な東京農業イノベーションプロジェクトを進めている。島しょ部は都市農地とはまた違った農業施策を打っていく」
―今後の展望は。
「東京は食料自給率が1%程度。だが、都市農地ならではの工夫をして地産地消が進めば、地方からトラックで運ぶ際に出るCO2排出量も減らせて環境にもよい。都市農地は重要で、子どもたちにとっては果樹のもぎ取りなど観光農業といった教育機能にもなる。防災面では延焼防止にもなる」
(聞き手・文=大塚久美)
日刊工業新聞2016年7月11日 中小・ベンチャー・中小政策面