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ヤマト運輸、沖縄の商社とアジア輸出拡大へ。そして生産者は海外を目指す

ヤマト運輸、沖縄の商社とアジア輸出拡大へ。そして生産者は海外を目指す

那覇市内でのヤマト運輸、ジェイシーシーの連携協定式。梅津克彦ヤマト運輸執行役員国際戦略室長=右から2番目、渕辺俊紀ジェイシーシー社長=同3番目

 ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸(東京都中央区)は、食品商社と連携し「国際宅急便」によるアジア向け輸出を伸ばす。ジェイシーシー(JCC、沖縄県糸満市、渕辺俊紀社長、098・992・6259)と連携協定を締結した。ヤマトの物流網と生産者情報、JCCの海外販路を組み合わせる。那覇空港の国際物流拠点を通じ、高鮮度で出荷する。

 JCCは香港などアジア向け輸出を手がける。現地飲食店やバイヤーのニーズをヤマトと共有、ヤマトは生産者の輸出支援を通じて産品を開発する。JCCの施設で加工した食品の輸出も見込む。また、JCCが運営する沖縄の飲食店では、宅急便で輸送した国内産品を提供。訪日外国人旅行者(インバウンド)の需要に応える。

 ヤマト運輸の梅津克彦執行役員国際戦略室長は「国内外で産品の商流を太くする」と期待する。JCCの渕辺社長は「沖縄文化に新たな価値を加えたい」とした。

福まる農場、自社ブランド豚拡販


 福まる農場(沖縄県南風原町、崎原多順社長、098・888・3564)は、自社ブランド豚「キビまる豚(とん)」の飼育数を2018年度に現状比5倍の3500頭に引き上げる。ソーセージやハムなど加工品の生産を強化して商品力を高め、通信販売による輸出も狙う。安定供給体制の確立と6次産業化を進め、同年度に売上高4億円を目指す。

 福まる農場はキビまる豚を自社で交配、肥育し、精肉や加工品として県内外のホテルや飲食店に販売している。引き合いが多く供給が追いついていなかったが、15年6月に新豚舎が稼働し、飼育頭数を増やしている。16年5月には加工場(同町)も稼働。現在700頭規模で飼育し、16年度は1500頭に増やす。15年度の売上高は約7000万円。


<衛生管理や豚のストレス軽減にもこだわる(福まる農場の15年6月稼働の豚舎)>

 飼料にはサトウキビの糖蜜や紅イモ、ヨモギ、沖縄特産の長命草を与え、豚舎の衛生管理や給餌方法などで豚のストレスを軽減し品質を高めている。肉質は柔らかく特有のにおいが少ない。甘くさらりとした脂身が特徴。琉球大学教育学部と実施した味覚試験では、国産高級豚肉と比べて「うま味」はほぼ同等、「味の深み」「コク」は上回った。「蒸す、ゆでるなど素材の味を楽しむ料理に向いている」(同社)という。

 生産量の増大とともに品質を武器に高級豚肉としてのブランド確立に力を入れる。沖縄の在来種ではないが「育て方にこだわった豚」(同)としてアピールし販路を広げる。
日刊工業新聞2016年7月4日/7日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
JCCは沖縄で「首里天楼」や「百名伽藍」などを運営しています。ヤマトとJCCの取り組みは、簡単にいうと「沖縄を日本産品のショールームにしましょう」ということ。そしてインバウンドにアピールして、帰国後に現地の飲食・小売やお取り寄せを通じて日本の生鮮品を食べてもらおうという狙いです。 沖縄の意欲ある生産者・メーカーの意識は、アジアに向き始めています。ただ、個社単独ではなかなか販路開拓は難しい。その意味で今回の連携は、いい循環の端緒になりそうです。

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