仙台空港きょう民営化。東急だけでなく前田建設、豊田通商が参画する理由とは
前田は「脱請け負い」、豊通は「本業との関連性」に期待して参画
仙台空港民営化には、前田建設工業、豊田通商も参画している。前田建設工業は中長期的な建設需要の縮小をにらみ「脱請負」を掲げている。従来の請負い型の建設業ではなくコンセッション事業を、新たな収益基盤として確保する狙いがある。最近では愛知県の有料道路8路線のコンセッションでも優先交渉権を獲得した。コンセッションを事業の柱に育成する方針だ。
豊田通商は「空港民営化の成功要因の一つは、航空営業と貨物営業」と認識。商社にとって空港運営は、幅広い事業基盤や関連企業との関係性を生かしやすい分野だ。既にタイガーエア台湾の就航や、アシアナ航空の仁川便のデイリー化が決まるなど、営業力を早速発揮している。
今後は空港運営実績を生かし、国内外で港湾運営なども含めた交通インフラ事業拡大につなげる考えだ。
地元はインバウンド拡大、物流向上に期待
地元・宮城県からは仙台空港民営化に歓迎の声が相次ぐ。仙台空港国際化利用促進協議会の会長を務める仙台商工会議所の鎌田宏会頭(七十七銀行会長)は、「今後の路線拡充と利用客数増加に期待する。東北のゲートウェーとして、現状では全国に比べると少ない訪日外国人の拡大につなげたい」と展望を語る。
<国内線のビル施設(改装後のイメージ)>
東北経済連合会の小野晋常務理事は、「路線拡充は、交流人口の増加や、機材の大型化による貨物量の増加につながる。地方空港の新しいモデルになるよう東北経済界としても応援する」として、物流拠点としての機能強化にも期待を寄せる。
関空は4月に完全民営化。オリックスなどが運営
オリックスと仏ヴァンシ・エアポートが設立した関西エアポート(大阪府泉佐野市)は4月、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)の運営を始めた。新関西国際空港(新関空会社)からバトンを引き継ぎ、完全民営化した。
訪日外国人の活発な利用が続いており、4月、5月は発着回数と利用旅客数ともに前年同月を上回るスタートを切った。新関空会社の誘致などで訪日外国人の取り込みに成功して業績が右肩上がりだったタイミングでの移行となった。
レンタルオフィスを空港内に4月設置。17年春には空港型市中免税店を大阪市中央区に出店するなど新機軸を打ち出す。新関空会社と関西エアポートのすり合わせにより、移行がスムーズに進んでいる。
識者の見方 「東急グループ、アジアに強み」
【三菱総合研究所 社会公共マネジメント研究本部交通・航空グループ主席研究員・松阪充博氏】
仙台空港の民営化では、空港ビルと滑走路を一体化して運営し、トータルでメリットを出すことになる。国が管理していた滑走路の管理・整備は採算がとれていない。民間の知恵を入れ一体化運営で改善する。
空港運営を主導する東急グループは、かつての日本エアシステムに携わった経験があり、アジアに強みがある。
LCCの誘致がポイントだ。すなわち、空港・地域にどれだけ人を呼び込めるかが重要になる。仙台を中心とした東北地域は観光資源が豊富でポテンシャルはある。
一方、気を付けなければいけないのは滑走路の管理・整備だ。安全な離着陸のための保安・保全の重要性を理解し、対処する必要がある。
日刊工業新聞2016年6月30日「深層断面」より