出井氏はソニー創業者・井深大からどんなインスピレーションを感じ取ったのか
「リジェネレーション」、「不連続の時代」というメッセージに込められた記憶
近代の科学を打ち破るカギは「モノと心」の一体化
ちょっとさっきのは言いっ放なしで無責任のような気がするので、私の考えるパラダイムってのは一体何であるか。現在、モノを中心とした科学が万能になっているわけですね。これはデカルトとニュートンが築き上げた「科学的」という言葉にすべての世界の人が、それにまんまと騙されて進んできたわけなんです。
もちろん今日の経済もソニーの繁栄もその騙されたパラダイムの上に立ってできあがったものだと思う。我々は現代の科学とういうもののパラダイムをぶち壊さなきゃほんとじゃない。物質だけというものの科学というものでは、もう次の世界では成り立たない、というところまで今きている。
それはどういうことかと言いますと、「デカルトがモノと心というのは二元的で両方独立するんだ」という表現をしている。これを話していたら1時間くらいかかるから、このぐらいにしておきますけど、モノと心と、あるいは人間と心というのは表裏一体である、というのが自然の姿だと思うんですよね。
それを考慮に入れることが、近代の科学のパラダイムを打ち破る、一番大きなキーだと思う。それが割に近いところで、我々がどういう商品を作ろうか、さっき話のあったカスタマーを満足させるためのモノをこしらえようか、というのは人間の心の問題だと思う。ハードウエアからだんだんソフトウエアーズが入ってきて、だいぶ人間の「心的」なものが出てきたんですけども、まだソフトウエアーズというと、なんだか分かんないんですよね。
ソフトウエアーズの意味もいろいろありますけど。もっと単刀直入に人間の心を満足させる、そういうことではじめて科学の科学たる所以があるので、そういうことを考えていかないと21世紀には通用しなくなる、ということをひとつ覚えて頂きたいと思います。
(司会)
ありがとうございます。今の井深名誉会長のお言葉、21世紀に向けての真のパラダイムシフト、今日お集まりの2400人全員、あるいは部下の方全員の宿題とさせて頂きます。宿題のできた方はR&D戦略までぜひ届けて頂きたいと思います。