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日本における「インダストリー4.0」を考える

クラウド利用促進機構・荒井康宏氏×SAPジャパンIoT/IR4ディレクター 村田聡一郎氏
日本における「インダストリー4.0」を考える

クラウド利用促進機構 荒井康宏氏(左)、SAPジャパン 村田聡一郎氏

 

「もうける仕組み」の構築


 荒井 インダストリー4.0を実現するため、IoTやクラウドが注目されています。IoTは業界や業種、企業ごとに捉え方は異なりますが、それについてどのように考えていますか。また、今後どのようにビジネスに結びつくと思いますか。
 村田 そもそもIoTを「モノのインターネット」と訳すのはほぼ誤訳で、「モノ・コトの相互接続」と解釈すべきと思います。いずれにせよIoTは手段、ツールに過ぎず、それ自体が金を生んでくれるわけではありません。SAPでは、IoTで得られるデータと生産や販売、保守など企業が持つ業務プロセスとを連携させて「もうける仕組み」を構築する「IoP(Internet of Processes)」という概念で考えています。
 荒井 業務プロセスを連携させて「もうける仕組み」を構築する「IoP」という概念は来るべき業界変化の本質を表していると思います。私もIoTにより「モノ・コト」をつなげることは手段でしかなく、それによりどのような新しい市場価値を生み出し、ビジネスを創出するかが重要だと考えています。
 

協業でビジネス展開を


 荒井 今後、IoTやクラウドの利活用は日本の製造業でも進んでいくと思いますか。また、その中でどのようにビジネスを行っていくべきだと思いますか。
 村田 IoTやクラウドの利活用は間違いなく進んでいくと思います。クラウドは本質的にスケールメリットが利く性質がありますし、IoTの接続対象となる「モノ・コト」は企業のファイアウオールの「外」にあるのが普通なので、クラウドとは相性が良いです。クラウドが常識で、自社で保有するオンプレミスは例外になっていくでしょうね。どのようなビジネスかと言うと、先ほど述べた通り「タテ軸とヨコ軸の合わせ技でより高い付加価値を出していく」ということになりますが、その際の考え方のヒントとして私がお勧めしているのは「他社に落ちているカネを拾う」です。お客さまである企業が自社に払ってくれているカネ以外の全てのカネは、他社に支払われているわけでそれを自社に持ってくる。例えば「節電製品」とはお客さま企業が従来は電力会社に払っていたカネを自社の価値として取り込むと考えることができます。

 荒井 IoTやクラウドの利活用が進む中で、今後求められる人材像はどのようなものだと思いますか。
 村田 IoTはハードウエア・ネットワーク・ソフトウエアの三つの分野の組み合わせで、それぞれに深く広い専門性が求められます。そのため、残念ながら三つの分野全てに精通した人材は非現実的だと思います。したがって、会社はそのような人材の内部育成を図るのではなく、足りないスキルを外部から積極的に補うという方向に転換すべきだと思います。
 荒井 業界変化のスピードを考えるといかに専門性を持ったパートナー企業と協業し、ビジネス展開していくかが今後のインダストリー4.0、IoT分野における成功のカギになりますね。

【ご対談いただいた2人が参加するクラウドコミュニティの詳細はホームページをご覧ください。】
http://www.cloudshow.jp/raijo/
日刊工業新聞2016年6月10日企画特集
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
境目がなくなる~これはネットワーク時代の必至の結果。今回のインダストリアルなテーマは、その境目がなくなることを体感するに、十分なセッションのラインナップ。ここで言う"境目"とは、物理的なモノだけを意味するわけではない。セッションを通じて感じてほしいのは、代表的なモノゴトとしては、アナログとデジタルの境目がなくなることなどがある。日本は本来、コンテキストを理解・共有できているからこそ境目をあまり意識してこなかった文化的背景を持っている。それをビジネスに繊細に、したたかに、徹底的に応用する気概が、日本勢に必要とされる。是非とも会場で先進的な取り組みから、事例そのものではなく、"気概"を学び取り、実行して欲しい。                   

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