ニュースイッチ

熊本地震でスーパー・コンビニ、東日本大震災の教訓生かす

“ラストワンマイル”の配送になお課題
熊本地震でスーパー・コンビニ、東日本大震災の教訓生かす

地震後のセブン−イレブン店内と阿蘇大橋の崩落で渋滞する県道


協定生かし物資提供


 小売り各社は支援物資の提供でも存在感を発揮した。取引先と連携し、事前の協定を基に行政の要請に応じて食品やおむつ、毛布などの生活必需品を届けた。

 ただ災害発生直後は行政も混乱しているため、支援の申し出を受けても適切に対処するのは難しい。ファミマは4月15日には益城町役場におにぎり500個と水500本など比較的少量を配送した。同17日以降は物資の偏りなどを防ぐために熊本県と相談して支援内容を決め、県にまとめて渡す方法をとった。

 イオンの津末浩治グループ総務部長は自治体などとの協定や防災訓練を通じ、「有事の際はイオンに相談しようという認識が広がっている」と話す。同16日には、熊本県御船町から要請を受け、連携先の日本航空や陸上自衛隊と共同で、簡易避難所として使えるバルーンシェルターを設置した。

 東日本大震災から5年余りが経過し、スーパー、コンビニ各社はBCP対策を進めてきた。セブン&アイ・HDはインターネット上の地図に店舗の被害状況などを表示するシステムを構築し、埼玉県杉戸町に燃料備蓄基地を設けた。

 イオンは災害時に備え、食品や日用品のメーカーと連携して工場や商品などの情報を一元管理するポータルサイトを構築した。店舗への自家発電施設を進めるなど、災害時にも事業を継続できるよう、仕組みづくりをしている。

(イオンはJALと結んだ緊急物質輸送の覚書を生かし毛布などの支援物資を空輸)

道路寸断で人海戦術


 しかし今回の熊本地震では、商品の輸送に難航した。セブン&アイ・HDは「道路事情が課題となった」としている。同社は熊本県内の需要増に対応するため、配送車両を増車、増便した。こうした工夫をしても、店舗に届けられなければコンビニの役割は果たせない。通行不可の道路を把握することはできても、迂回(うかい)路を見つけるのは難しく「今後の課題だ」としている。

 通行できる道路でも、深刻な渋滞に巻き込まれた。あるコンビニ関係者は「緊急通行車両として、もっと認知してほしい」と訴える。

 ローソンは震度7を2回観測した熊本県益城町に、配送センターを持つ。同センターの被害は少なかったが周辺の道路が寸断したうえ、配送員が被災したため人手が足りなくなった。「応援で入った社員が小道を通って運ぶ人海戦術を取った。阪神・淡路大震災や東日本大震災の経験が生きた」という。
(文=江上佑美子)
日刊工業新聞2016年5月31日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
スーパー、コンビニ各社の災害への対応力は阪神大震災、東日本大震災などいくつかの災害を通じて確実に高まっているという感じがします。店舗の復旧支援、営業の継続、商品調達ルートの確保など災害の経験を積むごとに迅速化しているようです。ただ、がけ崩れや橋の崩落などで物流ルートの寸断はいかんともしがたく、ウ回ルートすら確保できないジレンマもあります。小売業によるヘリコプターの共同運航による共同配送なども一つの選択肢ではないでしょうか。

編集部のおすすめ