オバマの広島スピーチは“Yes, we can”だった

文=蔭山洋介(スピーチライター)広島スピーチを分析する意味

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出典:首相官邸ホームページ

キーメッセージは「道徳の革命」


 スピーチ全体を通して訴えたいキーメッセージは「道徳の革命」が必要だということでした。人類が手にした原爆という科学技術の革命は、同時に人類の道徳的な革命を必要とし、もしそれを達成できなければ人類は滅びるだろうというメッセージが、首尾一貫して語られています。

 そして、どうすればその革命が実現出来るのかという点についてオバマが訴えたのは、意志の力でした。「恐怖の論理から脱する勇気を持ち、核兵器のない世界を追求」する。つまり、恐怖という感情と戦えるのは、平和を追求する意志の力だというのです。

 そして、聞く者の意志に、米国内で聞く者の意志に訴えかけるために、「子ども達が朝起きたときに見せる笑顔」など、すべての人々に大切な人がいることを訴えています。

今後の展望について


 今後も米大統領が原爆投下について謝罪するということは、まずないと考えられます。今回のメッセージは、謝罪をせずに前を向くということを明言しているようなものだからです。

 しかし、謝罪にこだわらず、平和を願うというのは被爆者も同じ思いではないかと思います。終始、厳しい表情で慎重に振る舞っていたオバマが唯一笑顔を見せたのは、被爆者の坪井直氏(91)と握手をしたときだけです。この被爆者と膝を屈さずに顔を寄せるシーンも、演出されたものです。しかし、 筆者には、心を通わせる二人の様子は、同じ未来を見据える同士の心からの表情に見えました。

 これは偶然かもしれないのですが、石碑に書かれた「過ちは繰り返しませぬから」の主語も「人類」、つまり “We” です。オバマのスピーチに、これほどふさわしい場所はなかったと思います。

 実にオバマらしい、オバマにしかできない、精緻に積み上げられたスピーチだったと言えると思います。
<略歴>
蔭山 洋介(かげやま ようすけ)
スピーチライター、ブランドディレクター、演出家。 パブリックスピーキング(講演、スピーチ、プレゼン)やブランド戦略を裏から支えるブレインとして活躍。クライアントには一部上場企業、外資系企業、中小ベンチャー企業の経営者や管理職、政治家、NPO 代表、公益法人理事長、講師などのリーダー層が多い。著書に「スピーチライター 言葉で世界を変える仕事」(角川Oneテーマ21)など。

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COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

当日、自宅に帰ってじっくりスピーチ映像で見た。不覚にも涙が出そうになった。米国大統領以前に、そこにはバラク・オバマ個人の言葉を感じたからだ。 主語は「We」だった。でももう一つの主語はやっぱりオバマだった。

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