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自社農園という理想を追わない“野菜のサブウェイ”の本気度

トマト約1400トン、レタス2100トン、タマネギ490トン。カット業者から安定調達
自社農園という理想を追わない“野菜のサブウェイ”の本気度

多くの消費者にとって、国産品のメリットは“安心感”

 レタスやトマトをはさんだ新鮮なサンドイッチを提供し、消費者の野菜志向を背景に売り上げを伸ばしている外食企業、日本サブウェイ。会社で掲げるキーワードもずばり“野菜のサブウェイ”だ。具材をはさむパンも、2014年から北海道産小麦「ゆめちから」を15%配合。国産品調達志向に応える。
 
 ■デメリット解消
 「野菜の国産比率は現在8割くらい。以前よりだいぶ上がってきた」。マーケティング商品本部の飯田真弓商品購買部長は話す。全国に約470店舗を持つ同社が年間で調達する原料野菜の量はトマトが約1400トン、レタスが同2100トン、タマネギが同490トンなど。野菜は生産農家や自社農園から直接仕入れるのでなく、デリカフーズグループなどのカット野菜業者を使っている。

 「カット野菜業者を介することで、年間を通じて野菜を安定調達できる」と飯田部長。契約農家や自社農園を持つ方式は一見、理想ではあるが、産地の天候や野菜の出来不出来に左右されやすいデメリットもある。デリカフーズのような業者を介すことで、価格変動や調達リスクが減らせるほか、野菜の歩留まりを上げられる利点もある。

 ハンバーガーに使うトマトは大玉サイズが求められるが、同社のサンドイッチに必要なのはSやSSなどのスモールサイズ。それだけのSサイズを農家側でそろえるのは大変だし、トマトは農産物なのでLLや3Lなどの大玉も大量に出る。日本サブウェイの品質規格で言えば買い取り対象外になってしまうが、中間業者を介しているため「大玉を使う別の外食や小売りユーザーと住み分けられ、野菜を買い取ってもらえることで農家側の安心感も高まる」(飯田部長)と、メリットを強調する。
 
 ■産地に出向く
 もちろん、カット野菜業者に全部を任せるのではなく、購買担当者は産地に必ず出向いて生産者の生の声をチェック、野菜の品質向上に役立てている。野菜農家にはミネラル成分を豊富に含んだ十和田石を使用してもらい、根からの養分吸収力が高まることで化学肥料や農薬使用量を抑える効果があるという。同社の店舗にはフランチャイジー(FC)加盟店も多いが、契約オーナーに野菜畑を実際に見てもらったり、北軽井沢にある契約レタス畑などは「社員研修で利用している」(営業企画部の角田淳グループリーダー)という。

 同社はまた、植物工場野菜を店舗で取り入れていることでも知られる。ただ、展開は限定的。イチゴやパプリカなどに比べ、レタスなどの葉物は単価が安いため、露地栽培野菜との価格競争になる。植物工場野菜は露地物に比べると価格が3―5倍もするため、採算に合わないという。東京・丸の内や大阪・梅田など特定エリアの店で、サンドイッチの値段も通常より数十円高くして、販売している。将来は高機能野菜などで差別化する方法も考えられるが、今のところ可能性は低そうだ。
 
 ■小麦に甘み
 多くの消費者にとって、国産品のメリットは“安心感”。野菜に加え、店内で焼き上げるパンの小麦にも、昨年から北海道産の「ゆめちから」を採用した。数量の関係で100%ゆめちからを採用しているわけではないが、小麦由来の甘みやうまみがアップしているという。消費者の側からすれば北海道産の小麦を使っているとの、安心感がある。「今後もこうした差別化情報を店舗でどんどん発信していきたい」(飯田部長)と将来戦略を語る。
日刊工業新聞2015年04月20日 モノづくり面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
2011年にサブウェイはマクドナルドを抜いて世界最大の飲食店チェーンになったとか。マックがこういう状況なので、サブウェイをはじめライバルは日本でもキャンペーンを含め一気に攻めてくるだろう。コンビニも入り交じって飲食チェーンは地殻変動が起こりそう。

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