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味の素、働き方めぐる「内外格差」を解消へ

日本特有のビジネス風土がグローバル化の障害に
 味の素は2016年度の重点施策として、人材のダイバーシティーを進めるための基盤整備に取り組む。残業前提の働き方を改め、定時退社を可能にし、子どもを持つ女性や外国籍社員も登用しやすくする。同社は食品の海外売上高比率が5割を超える国際企業だが、定時退社が原則の海外子会社と国内の差は大きい。海外子会社のノウハウ活用などを積極的に進める。

 「海外子会社では定時退社が当たり前なのに国内はまだまだ。これでは、本当に有能な人材が採用できなくなる」(味の素の西井孝明社長)。味の素は20年度までに15年度7時間35分だった1日労働時間を7時間、同1947時間だった年間平均労働時間を1800時間未満に短縮する目標を掲げる。実はこの目標、海外では達成しているところが多い。問題は国内で、定時後も社員の多くは残業し、女性管理職比率も約3―7%にとどまる。

 日本企業の労働時間は外国に比べて長い。といって、頭ごなしに時短10分運動などを実施しても効果は低いと西井社長は見る。このため、定時退社が当然の海外子会社が持つノウハウを詳細に分析し、可能なものは国内に導入する方針だ。

 一方、スーパーへの営業など、同社の努力だけでは解決できない問題もある。打ち合わせは夕方からが大半で、日曜出勤も多い。値段交渉などは酒席の場も考えられる。西井社長は「重要な交渉は夜からという日本特有のビジネス風土がグローバル化の障害になっている」と指摘する。

 今後、東南アジアの幹部社員が日本で働いたり、日本人社員が北米に転勤したりするケースがどんどん増える。同社では“働き方を内外で同じにすること”に挑戦していく。
2016年5月12日付総合3面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
働き方改革をめぐり、海外子会社のノウハウを積極活用するという同社方針は興味深い。労働時間そのものだけでなく、ワークライフバランスに対する価値観や国民性は国や地域によってさまざまであるだけに、こうした「多様性」を制度づくりや環境整備にどう生かしていくのか注目したい。

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