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スカイランドベンチャーズ木下CEOに聞く、「若い天才」の探し方(後編)

イチローはいつから天才か?
スカイランドベンチャーズ木下CEOに聞く、「若い天才」の探し方(後編)

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イチローはいつから天才か?


―何かに突出した才能を持つ人って、どういうタイミングで花開くのでしょうか。極端な例だと昔の天才は死んでから評価されるなど、時間がかかるイメージが個人的にはあります。
 でも、普通の人から見たときに「それはポジティブなのか」ってことをずっと続けられている人はメンタル強いですよね。僕のさっきの定義でいうと天才です。そうやって一つのことが続けられる人は、例え他のプロジェクトになったとしても長く続けられると思うんですよね。だからプロジェクト転換をしてもいいと思います。ただ無理に外から振り回すことはやらないほうがいいと思いますけど。

―「天才に投資する」ということをもう少し詳しく教えていただけますか。
 とくに、天才エンジニアチームに投資したいんですよね。グーグルのラリーページやfacebookのザッカーバーグとかは天才経営者でもありますけど、スタートは天才エンジニアなんですね。社長もエンジニアのほうがいいと思っていますし、エンジニアがいない会社には投資しないことが多いですね。社長だけの会社もいますけど、エンジニアを探してくるパターンとか、社長がプログラミングを勉強するくらいでもいいなと思っていますね。

―やはり天才を見出すのは難しそうだなと、思ってしまいます。
 天才について考え始めたのもイチローがきっかけなんです。イチローっていつから天才なのかという質問はいい質問だなと思っていて。彼は高校卒業後オリックスの2軍スタートで、その時点で普通は天才だと思われないですよね。でもめちゃめちゃ長く野球人生を考えていて、自分のコンディションを一番大事にしてきたと思うんです。だから例えばバラエティー番組なんかには出ない。毎日、走ったり毎日バットを振ったりしていると思うし、やっているはずですよね。

 起業家とイチローは一緒だと思っていて、成功する人は長く続けられるんじゃないかと思っています。続けるって実は難しいんです。迷ったときは色々な人に相談したり、調べてみたりちょっと休んでみたりとか、いろいろやり方を変える。それでもその間に休んでいるんじゃなくて、なんらかを毎日進めていることが多いとは思います。そこから1カ月後か2カ月後かに思いっきり奮起してドッとやってみるとか。やりたいことをやって食えている人は一番自然体なので、起業家もそうなってほしいなと。

120点の人は強い


―逆に会社が大きくなっていって、自然体じゃなくなる会社ってありますよね。
 そうですね。めちゃくちゃ多いと思いますよ。だから人を採用し過ぎないってこともあると思いますけどね。難しいですけど。

 でも大企業でプロダクトアウト型のプロジェクトって、ほとんど立ち上げられないと思っています。頭のいい人がめちゃくちゃリサーチしたプロジェクトが立ち上がるほうにいきやすいですね。

 僕はジェネラルな人より、ある意味、プロフェッショナルや貪欲な人がいいなって思っています。ゲーム毎日やっているなんて誰もふつう評価しないじゃないですか、この日本社会では。でもぼくはゲームをやりまくってきたからわかるインサイトがある人って、もっとやれると思うんですよね。

―プロフェッショナルなところを守りつつ、他の必要な部分はメンバーが補うというチームがよいのでしょうか。
 でもそれも能力値の平均点が高い人がやるより、プロジェクトにめちゃくちゃコミットできる人がやったほうがいいと思います。

―たとえ不得意であっても?
 はい。平均点なわけじゃないですか?80点5科目のような人と、一個だけが120点みたいな人が他の能力も学んでいったときに、後者の方が僕はいいと思っています。誰も注目していないかつ成長率が高いと思うんですよね。80点の人は多分、それぞれ100点までしかいかないですよね。120点とっている人は他の能力は0からのスタートかもしれないけど、他の能力がぶわって伸びる可能性がある。こっちの人のほうが社会にあまり注目されていない、かつ才能ある。

―120点あるってことはそれだけ続けてきたってことでもあって、これからも続けるでしょうね。
 僕の友人で東大の博士の人と話したことがあって、彼は外資系の投資銀行とかで働いていたんですけど、スタンフォードとかハーバードから来た人ともシティのアメリカにいたときは働いていたと、そうするとみんな、ハーバードに行くには成績もよくないといけない、ボランティアもやっていないといけない。面接もあります。そうすると、ある意味同じような“ハーバードライクな人”がめちゃめちゃ集まる。

 一方で日本では、東大とか早稲田とか慶應とか、基本的に面接がなくても行けますよね。でも、日本社会で大企業に行きたいっていうときって、面接やりますよね。面接やるのがダメなんじゃなくて、東大で一番物理できた、一番数学できたみたいな人でも評価されないことがある。たまに研究職であるといえばあるんですけど、そういう尖った人たちってめちゃくちゃ見逃されまくっているんじゃないかと。

 平均点で勝負するとそもそもアメリカというか世界のほうが人口も多いので日本人は勝ちようがないと。でも、例えば日本の漫画「ワンピース」は世界的な漫画になっていて、こういうのが日本から出るのはある意味必然性があるなと思って。作者の尾田栄一郎さんも長く続けられる人。やっぱり日本人は辛抱強いですよね。
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「長く続ける」ことが天才への第一歩。何かを自分で始めてみたい、アイデアを形にしてみたい、という方は水曜日に木下さんのところへ相談に行ってみてはどうでしょうか。

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